穏やかだった人が…高次脳機能障害になったら怒りやすくなったのはなぜ?

高次脳機能障害体験談~退院後~

「脳の病気になった父親が退院したものの、とても怒りやすくなった」そんなツイートを見かけました。

身内が病気で豹変したら驚くのは当たり前だと思います。退院後は以前のような暮らしに戻ると考えて当然ですものね。

怒りやすくなった本人もそう考えていたと思います。「退院したらまた以前のような暮らしが始まる。仕事の遅れも取り戻さなくちゃ。周りに迷惑を沢山かけてしまった。」そんな気持ちもあったかもしれません。

私がインフルエンザ脳症で大学病院に入院していたときは、そんな事を考えていました。

退院すれば、またいつもの毎日が始まると信じていました。でも現実は違っていました。無限地獄が待っていたのです。

今では以前のように落ち着いていますが、退院後しばらくの間は感情の制御が出来ずにいました。その中には怒りの暴走もありました。

今回は怒りをキーワードにした私のエピソードを紹介します。

高次脳機能障害を始めて実感した日

私は自営業です。仕事の調整が効きます。退院後は数日ほど何もせずゆったりとした毎日を過ごしていました。病み上がりですからね。その頃は至って平和な毎日を送っていました。

「そろそろ仕事を始めよう」久しぶりにパソコンのスイッチに電源を入れました。懐かしい感覚です。やる気は満々。入院する直前に行っていた仕事を再開しようとします。

ところが…。出来ないのです。仕事が出来ないのです。意味が解りませんでした。

何をすべきか。仕事のゴールは理解しています。入院するまで誰とやり取りをしていたのかも覚えています。だけど細かい部分の約束事が思い出せないのです。

「結構細かい部分のやり取りをしていたし、時間も空いてしまった。忘れてしまうのは仕方がないな」そう考えました。

お客さんとのやり取りは全てメールで行います。私はお客さんとのやり取りメールを最初から確認し直しました。ところが…。

生まれて初めてぶち当たった障害の壁

「ああああああああ!!」

ここで最初の怒りが爆発しました。「仕事が思い出せなかった?」それもありますが、それ以前のところで躓いてしまったのです。

お客さんとのやり取りメールは一年近くあります。一番最初の挨拶のメールから確認し直しました。途中まではスムーズに振り返えられます。でも夏あたりのメールから訳がわからなくなり始めるのです。

わからなくなる理由が解りませんでした。一年分のメールは数十通に及びます。質問に質問で答えるようなものもあります。まるでこんがらがった毛糸。そんなメールを読み返していくうちに頭の中が混乱してしまうのです。

「なんで質問に質問で返してくるんだ!だから訳がわからなくなるんだ!」

ついに怒りが爆発しました。机をバンバン叩いたと思います。驚いた子供が仕事部屋に駆けつけてきました。

「うるせえ!仕事部屋に来るな!」

自分で言うのもナンですが、普段の私はとてもおっとりしています。怒鳴るタイプではありません。あまりの豹変ぶりに子供は泣き始めました。妻も泣いていたと思います。

疲れると記憶力が低下します。しかし仕事を進めるためには仕事を思い出さなければなりません。

仕事を思い出すためには一年分のやり取りの記録を読み返さなければなりません。記録を読み返すと疲れます。疲れるとますます記憶力が低下します。

記録を読み返す最中に、読み返した内容を忘れてしまいます。忘れたらまた最初から読み返します。カラカラカラ…いつまでも環の中を走り続けるハムスターのようです。

ついに大声で怒り狂いはじめました。発狂状態です。食事も取らずにひたすら机にかじりつき、時間は深夜0:00を過ぎていたと思います。休憩は昼食後は一切取れていません。

休憩なんてとんでもないです。思い出したものが消えてしまいますから。

疲れも感じていません。本来なら易疲労でグッタリなんです。でも精神が混乱しているため、疲れているのに疲れを感じない危険な状態なんです。

ひと声かけたられた瞬間にも記憶が消し飛びます。その時の怒りが尋常ではないため家族は近づけない状況です。もうだれも止められません。

「もう一度倒れたら一生寝たきり。」

そんな大学病院の医師の忠告も私を止めることができませんでした。

人間の本能?あがらえなかった怒りの理由

それから数か月後だいぶ症状が落ち着いてきたころに。妻が言いました。「あの時は人間とは思えないような形相になっていた。」

なぜそれほどまでに怒り狂ったのでしょうか?あの時を振り返ると、次のような状況に陥っていました。

  • 自分の存在価値を失う恐怖心。
  • 出来ないはずがないという病識不足。
  • 休憩を取ることで忘れてしまう恐怖心。
  • 休憩を取らずに働き続けた疲労。
  • 疲労によるさらなる記憶力の低下。
  • しかし疲れているのに疲れを感じていない。

恐怖心から逃れるために疲れはて、記憶を悪くし、思い出せない恐怖から逃れるためにさらに疲れ果て、怒り狂っていたのです。

映画などで恐怖でパニックになった群衆が、逃げ惑いながら炎の中に飛び込んでしまう…まるでそれと同じ状況。

パニックはさらなるパニックを引き起こします。パニックから抜け出そうとしますが記憶障害・遂行機能障害のためでしょうか。自力では抜け出せません。

目の前の出来て当たり前の課題に吸い寄せられます。しかし出来ないために怒りが爆発します。怒りの無限ループです。

疲れが更に記憶力を低下させます。自分で自分をコントロール出来ません。

「苦しい助けてくれ」そう心の中で叫びながら、どうすることも出来なくてパニックになり怒り狂っていたのだと思います。

ダダ洩れする怒りの理由は人それぞれ

ツイッターでつぶやかれていた怒りやすくなった当人は、何が原因で怒っているのかは解りません。気に入らない事ばかりが目について怒っているのかもしれません。高次脳になると負の情報が沢山印象に残るそうですから。

高次脳機能障害には感情失禁といって抑制が効かなくなり、感情がぼろほろとこぼれ落ちる症状もあります。だから人によって理由はまちまちなのです。本当の理由は病院の心理検査であぶり出されることでしょう。

私の尋常ではない怒りの原因は「自分の存在価値が無くなったと周囲に思われる恐怖」からきたものだったのだと考えています。

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