高次脳機能障害とは|当事者として4年半経験した経験から語る

身内が高次脳機能障害になった。そう診断された。入院中にソーシャルワーカーさんからそう伝えられた…。

でも高次脳機能障害なんて初めて聞くし意味がわからない。障害らしいけれど実感がわかない。

これからの生活がどうなるのかな。家族はどうなるのかな?どうフォローしていけばいいのかな?とにかくわからない…。

そんな時ってどうしますか?

まずは「高次脳機能障害ってなんだ?」を調べたりしませんか?もちろん担当医師や看護師から説明はされると思います。が…

「大変そうだけれど、なんだかよくわからない。」

「そもそも当人はあまり大変そうにも見えない。」

「調べてみたら障害って書いてあるけれど、何がどう障害なの?」

そんな感じになるかもしれませんね。

特に私のように、障害が見えずらいケースだと余計なおさらかもしれません。

本人は「退院したらすぐに仕事を再開するよ!」なんて張り切っていたりしてね…

そんなわけで今日は、高次脳機能障害を実際に経験した、当事者である私が、「高次脳機能障害とは何だ?」について、直球で書きたいと思います。

もちろん当事者視点となります。だから家族視点とはずれがあるかもしれません。しかしズレってストレスの原因だったりするから知っておいて損はないと思います。

高次脳機能障害とは…最初は実感のないものでした

ざっくりとまとめると「とんでもないハンデを背負わされた状態」ですかね。しかもかなりいびつなハンデです。

例えばドラクエを想像してみてください。ドラクエの主人公には攻撃力、防御力、すばやさ、魔力…などのパラメータがありますよね。レベルが上がると少しずつ上昇しますよね。

普通の人は年齢や経験に応じて平均的に数値が積み重なりながらレベルが上昇します。私も障害になるまではそんな感じでした。ところがある日事故や病気で高次脳機能障害になるとこうなります。

「攻撃力と、防御力、魔力はそれぞれ200のままなのに、素早さだけ数値が1になった。」

ゲームなら数値で確認できますね。

「素早さが1になってしまった!うごきがおそーーーい」って。

でも現実では自分の能力が数値で確認できるわけがありません。だから

「なぜかよくわからないが動きがとても遅くなってしまった」「なんで?なんで?なんで?」

となります。

っていうか、最初の頃は自分のステータスが変化したことに気が付きません。ごくごく普通に動きが遅くなった自分を受け入れてしまいます。(注意障害かな?)

だから、周りから見たら「すっごい動作が遅い。」「話すペースも遅い」「ヤバいくらい遅い」なのですが、自分からしたら「病気をする前と変わっていないよね?」なんですよ。

障害を負った当人だけが素早さが1になってしまったことに気づけないのです。

だから「退院したらまたバリバリ仕事をするぞ」なんて、夢みたいなことを語れるんですよね。これが高次脳機能障害の地獄の始まりなんです。

そう、まだ入り口なんですよね。退院後の日常生活で起こる悲劇のね…(涙)

記憶障害ってどんな感じ?

私の記憶障害は「短期記憶障害」と言います。昔のことは覚えているけれど、つい最近のことが覚えられません。(正確には覚えにくい)

記憶は海馬と大脳で行うようです。

物事を記憶する仕組みですが、最初は海馬に記憶が溜まります。1か月ぐらい。

その中から長期間再利用する情報を大脳に保存する仕組みになっているそうです。

私は海馬に障害を持ちました。そのため新しい事が覚えられなくなりました。逆に古い事は覚えています。

障害になりたての頃は30秒も記憶が保てませんでした。言われたことをあっという間に忘れてしまう状態。本当にあっという間ですよ。言われた瞬間に忘れているような感じです。

知らない人が当時の私の相手をしたら、馬鹿にされていると勘違いして怒り出すかもしれません。私の相手をしていた子供は恐怖心で泣き出してしまったそうです。記憶障害の私は当然、覚えていませんが。

ちなみに覚えられないという実感が出てきたのは、入院中の心理検査の時かな?毎日記憶の心理検査を行いました。本来なら検査内容を覚えてしまうために半年に1回しかできないそうですが、私は何も覚えられないので毎日行われました。

毎日同じ心理検査を行った結果は100人中100位の記憶力でした。要見守りの精神障碍者となりました。

記憶障害を持ったままで仕事を再開したのですが、それはもう地獄でしたね。当たり前に出来ていたことが一切出来なくなっていました。

例えばメール。送ったのか送っていないのか思い出せません。だから何度も同じメールを送ったりしました。システム開発もロジックを書いた後に、書いたことを忘れる有様です。同じプログラムが何本も作られました。微妙に違うので「どれが正解かが分からない!」とパニックにもなりました。

仕事だけではありません。記憶に障害があると、とにかく日常生活が不便です。妻からお手伝いを頼まれても、三歩移動するうちに「何をするんだったかな?」状態です。完全に「鶏のような頭」状態でした。ひどすぎますね。

私は記憶障害があると、この先、まともに生きていけないと恐怖しました。完全に廃人ですよこの状態は…。だから必死にメモを取るようになりました。自分の脳で記憶できないのなら、道具を使ってカバーしようと考えたんですよね。

最初の頃はメタメタでしたが、だんだんノウハウが見えてきたおかげで、今では上手に(?)メモをとれるようになりましたよ。記憶障害があってもスキルは上達するようです。

注意障害ってどんな感じ?

少し前までは「記憶障害ゆえに注意すべきことを忘れるから注意障害だ。」そう考えていましたが、最近は違う気がしています。「注意すべきことを注意できなくなっている。」と、純粋に注意力が低下している気がしています。(同じように見えます?)

特に疲れが酷い時。明らかに注意力が低下しています。やるべきことをやらずにいるのに気が付けない。それが注意障害なのでは?と考えています。

注意障害があるとどうなるか。私が実感しているのは注意障害があると「ミスに気がつけなくなる」ですね。

例えば入院中は食堂に散歩に行き、当日の食事メニューを見るのが日課でした。一日に何度も同じメニューを確認していました。記憶障害でメニューの内容を覚えられないので毎回新鮮な気分でしたよ。

メニューに掲示されているのは「一般の入院患者用のメニュー」でした。しかし私が食べていたのは「糖尿病患者用のメニュー」内容が全く異なるのです。普通ならすぐに「メニューが違う」と気づくでしょう。

しかし私は違っていました「こんなおかず出たかな?出たような気がするなぁ」です。

記憶障害、注意障害ゆえに自分用の食事メニューではないのに気が付けなかったのです。

これも注意障害ゆえ?今思うとぞっとする注意障害

私、入院していた1か月間は毎日MRIの検査を受けていました。脳が腫れ上がっていて予断を許さない状態だったんです。しかしMRI装置の形を正しく認識できていませんでした。スポーツジムなどにある酸素カプセルの形だとずっと認識していたんですよね。認知がゆがみまくっていました。

またコーヒーの香りや消毒の匂いがしていない事にも気づいていませんでした。どうやら私は脳が腫れ上がった影響で嗅覚がダメになっていたようなんです。

普通なら「匂いがしない!」とパニックかもしれませんね。でも私はパニックを起こしませんでした。なぜかというと匂いがしない事に気づいていなかったからです。これは完全に注意障害ゆえだとおもいます。

さらに恐ろしいのは、痛みすら感じていなかった点です。毎日点滴と注射を打ち続けていたのですが、全く痛みを感じていませんでした。

というか、痛みを感じていない事に気が付いていませんでした。はい。これも注意障害ゆえでしょうね。

注意障害になると五感を失っても気が付かないようです。今思うとぞっとします。

遂行機能障害…これじゃまともに生活できるわけないじゃない

私はこのように記憶障害と注意障害があります。それゆえに遂行機能障害とされています。

遂行機能障害とは何らかの問題があるために目的を達成できなくなる障害です。

例えば「一人で千葉リハに行きリハビリを受ける」こういうことができませんでした。

自分の気持ち的には「いや、自宅から千葉リハへ行くなんて簡単でしょ?乗り換えを調べていけば時間内に到着できるよね?」だったんですよ。障害が酷かった頃も。

だから事前に何時間もかけて準備をして、一人で千葉リハに行くようにチャレンジしたりしたんですよね。でもダメなんですよね。どうがんばっても千葉リハにたどり着けないのです。

一番の原因は注意障害かなぁ…。って考えています。

目や耳から入ってくる情報を脳で分析して「次はこうしよう」と考えるのですよ。

で、実行する。実行するのは頭の中で決めた行動です。…なんだけれど、なぜか違う行動をとっているんですよね。すごく不思議なんです。ここが全く分からない。理由が見えない。意味不明。

「どうすればそういう行動になるんだ?」

自分で自分が不思議で仕方がなかったし情けなかったですね。

極々ナチュラルに間違えた行動をとるんですよ。頭の中では正解にたどり着ています。ゴールが描けているんですよ。あとは頭の中で思い描いたとおりに行動するだけなんです。間違えようがない。

ところが間違えるんです。全くもって頭の中で想定していない行動をとるのです。意味不明。こればかりは本当に意味不明。自分で自分が理解できません。

「注意障害ゆえの遂行機能障害」

なのだと思います。この障害は半年ぐらいは続きましたが、1年後には発生しなくなりましたね。よかったです。

ちなみにこの障害が残っているうちは100%運転不可です。当然ですよね。ブレーキとアクセルを踏み間違えるレベルでは済まないと思います。

高次脳機能障害のまとめ

私が書けるのは、記憶障害、遂行機能障害、注意障害の3つの障害だけです。他には半空間無視がありますが、体験していないので書けません。

高次脳機能障害は認知症に似ていると言われるようです。確かに経験していない事を経験した気になっていたり、無いものが有ったはずになっていたり、目の前から隠されると無くしてしまったと思ってしまったり…

辛いですねこの状態は。救いは認知症とは違い少しずつ快方に向かっていくことなのですが、障害の期間が長いほど、障害の状態が酷いほどに、人は離れていきます。

障害前は親しかった人たちも、雲の子を散らすように消えていきますね。それが障碍者の宿命なのかもしれません。ましてや「わけのわからない行動をとるかもしれない精神障碍者」なのですから。

辛いですよ。本当に。この障害は理解は困難です。

人から理解されずに孤立するのが高次脳機能障害の最も悲しい所なのだと思います。

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