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記憶障害と作話|当事者による振り返りと解消にいたるまでの体験

高次脳機能障害 体験談

ある日のことです。本気で一日中イライラしていたことがあります。妻曰く「その日はとてもヤサグレていた」「目がすわっていて尋常ではない雰囲気だった」だったそうです。

それはインフルエンザ脳症になってから3~4か月程経過した時の出来事だったかな…。

何もかもが敵に見えて、何もかもがどうでもよく感じてきて、とても投げやりになっていた日が1日だけありました。

病前の私の性格はとても穏やか。入院中も穏やか。おっとり。そんな感じでした。

そんな私は記憶障害の後遺症が残ったまま退院。

その後は病前と病後のギャップに苦しみながらも

  • 「改善しよう!」
  • 「また以前のように行動できるようになろう!」

とひたすら努力を重ねる毎日。

だけどついに精神が壊れてしまう日がやって来たのです。

1日だけですけれど…。

その日はとんでもない1日でした。

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高次脳機能障害なりたての私を襲った症状とは…

最近の仕事が思い出せない、覚えられない、覚えても消える!

その日の朝はいつもと同じように過ごしていたと思います。大学ノートに今現在やっている作業を記入しながら、お仕事をしていました。

私は記憶障害のため、新しい出来事が覚えられません。だからノートへの記録が必須だったんですよね。

ノートに記入するのは予定ではありません。今現在起きていることを一つ一つ記録します。そうしないと、後で「あの時、何があったんだろう?」が思い出せないんですよ。

過去の出来事を思い出せないと、今やっている事への整合性が取れなくなってしまうんですよね。「あれ?なぜ、今この作業をしているんだろ?」なんてしょっちゅうでしたよ。

酷い時は仕事中に、いままさに行っている仕事をする意味や理由を忘れちゃうのです。

現在やっている仕事をする理由を思い出すためには、仕事が始まる前の経緯からノートに細かく記録しておき、読み返さなければなりません。

テレビゲームに例えるとノートはセーブ機能です。セーブをしないでリセットボタンを押すと最初からやり直しですよね?それと同じです。

ちなみに私のセーブ機能は一部が故障しているために、時々保存した内容が完璧にクリアされてしまいます。そんな状態でした。

何度、仕事メールを1年前のあいさつから読み返しなおしたかわかりません!

疲れと共に記憶障害が悪化する

この時期を振り返ると易疲労が酷かったです。

仕事をしていると、すごい勢いで疲れていくんですよね。でも当人は疲れには気づいていません。でも疲れているためパフォーマンスがどんどん低下します。

私にとってのパフォーマンスを具体的に言い表すと記憶力です。疲れに比例して記憶障害がどんどん悪化していくんですよね。何度も体験しています。妻も同じことを言います。千葉リハからも言われたと思います。

記憶障害というと「思い出せないぃ」「頭があぁああ」みたいなイメージがあると思います。確かに思い出せないのですが、それだけではありません。

私の記憶障害の場合「全然関係ない記憶の断片を引っ張り出してくる」という厄介な症状がありました。簡単に言うと、やっていない事をやったと信じ込む非常識なレベルの勘違い状態。

記憶って、経験したストーリーを脳という名前のロッカーに保存しておくんですよね。で、必要な時に必要な記憶を取り出して再生する。そんな仕組みなんです。

記憶障害は大きく三つあります。ロッカーで例えるとこうなります。

  • そもそも記憶のロッカーが壊れていて何も保管できない。
  • 記憶のロッカーに保管できるけれど、取り出すときにぐちゃぐちゃに壊れている。
  • 記憶のロッカーに保管できるけれど、取り出すロッカーを間違えてしまう。

私の場合は、上記のパターンで3番目の記憶障害でした。変な所から記憶を取り出してきて再生していたのです。正しい記憶はあるのだけれど、それが上手に再生されない。記憶の取り出し方が下手。そんな感じです。

「易疲労+記憶障害+注意障害」がもたらしたもの

こんな出来事がありました。妻曰く「夕方になるとすごくヤサグレてイライラしていた」そんな状態だったそうです。

その日の午後のこと、私は「何もかもどうでもいい!」そんな気持ちに支配されていました。そうなった原因は「知人からいろいろと文句を言われた。」からです。

「何もかもやめてやる!」「どうでもいい!」「田舎に帰る!」…と、さんざん悪態をついていたそうです。

その日までは「障害を克服して元の場所に戻りたい」そう願って頑張ってきていたのに、突然の変わりよう。妻は大変驚いたと思います。

でも否定せずに「そうだよね。新しい仕事をさがそうね」と言ってくれていたため、それ以上何か問題が起きるはなく、私が一人でイライラしているだけの状態でした。

で、ここからが問題なのです。

自分の障害への気づきが一つ増えます。

イライラがマックスになって少し時間が経過して毎日記録しているノートを振り返ってみたのです。そうしたら…。

「あれ?なんで怒っていたんだろう…?」
「起こる理由が無いよね…。」
「あれれ…???」

自分でも何が何だか分かりませんでした。

私がヤサグレていた原因は「知人から文句を言われたから」です。だけど…その事実がノートに記載されていません。知人と会話をしたことは記載されています。自分の記憶とは全く別の事務的な内容です。

「え?え?え?なんで?…なんで、この内容で怒ってるの…?」まったく整合性が取れません。

この時は本当に自分自身が怖くなりました。

起きてもいない事実を頭の中で作り上げて、一人で勝手に怒り自暴自棄になっていたからです。

このように現実には起きていない話を、現実と信じてしまう症状を「作話」と言います。

「ありえない…。自分で自分が信用できない…。」

それまでもさんざん記憶障害でしんどい思いをしてきました。勘違で、ありもしない事実を、さも事実のように語る時もありました。これだけでも迷惑な話だけれど、まだマシです。

今回は作話が悪い方向に影響して負の感情を高めているわけです。

自暴自棄の原因。作話で自暴自棄ですよ…やめてくれぇええ。

自分自身にゾッとしました。そして思いました。

私は精神障碍者なんだと…。自分自身にがっかりです。滅茶苦茶落ち込みました。

作話と妄想の違い

「作話」を知らない人からすると「妄想」と同じもの?と感じるかもしれませんね。作話と妄想は全く違います。この違いを説明するとこんな感じです。↓

■作話
作話は背景に記憶障害があり,その確信の程度は低い。作話に基づいて実際に行動してしまう場合も少なくない4,5)が,一般的には妄想に基づく犯罪のような重大な事件に至ることはない。
作話には性格による影響は少なく,情動的色彩も乏しいと考えられる

■妄想
妄想性障害は性格や感情の影響が大きいことが知られている。フランスでは恋愛妄想,嫉妬妄想,復権妄想をまとめて熱情精神病と呼んでいる。病的な熱情の上に,強固な信念に支えられ妄想が構築されていき,闘争的で興奮しやすいといわれる。嫉妬妄想の背景には,器質疾患に伴う嫉妬妄想も含めて8),プライドが高い性格や失われたものを取り戻そうとする機制が強く働いている。

参照:BRAIN and NERVE 60巻7号 (2008年7月) 「記憶障害と作話 船山 道隆 1 , 三村 將 2 1足利赤十字病院精神神経科 2昭和大学医学部精神神経科」

何やら難しいですが、私はこう解釈しています。(私の経験と引用を読んだ限りで。ですけど)

  • 作話は記憶障害から起こる勘違い。
  • 妄想は欲望という感情から起こる嫉妬。

二つの違いは「感情」がどう作用しているかですかね。

  • 作話・・・事実だと認識してから感情が動く。
  • 妄想・・・感情が先に動いている。

感情が起点になっているので妄想の方が行動力があると思います。作話は感情は後からついてきます。ついてこない時もあるでしょう。なんらかの感情のスイッチが押されないと行動は起きません。

例えば「昨日のお昼はカレーを食べたなぁ。」という作話が浮かんだところで、何の感情も動きません。だから何もしようとは思いませんよね。

作話と妄想は同じような感じがしますが、感情が絡むかどうかで結果が変わってきそうです。

作話対策はこう実践した

記憶障害なので作話なんてしょっちゅう…って書くとつまらないので、感情の有無で判断を分けるとします。

  • 感情の変化を伴う記憶違い・・・作話
  • 感情の変化を友わない記憶違い・・・勘違い

このような分け方をすると、作話はこの日のヤサグレ事件以降一度も起きていません。

理由は「自分自身で作話という障害を発見して解決したから」なのかなぁ?って考えています。

この日以降、記憶違いで悪い想像が頭の中に広がったとしても、「作話じゃね?」って考えられるようになったんですよ。普段からノートをとっているおかげで、怪しいと感じた時はノートを振り返られるんです。

すると「案の定、存在しない事実を事実認定しているわ」って気が付くんです。この自分で作話つぶしを実行しているうちに、作話はゼロになりました。これも障害の克服の一つですね!

さらには疲れないように過ごすことを意識していたのも良かったのだと思います。

また一歩昔の自分に戻れたのでした。万歳!

作話がもたらす感情は怒りだけではない

作話って怖いです。周りも怖いと思います。でも自分自身でも怖いです。

作話でイライラするだけではないんですよ。

「嬉しい約束をして、楽しみにしていたのに作話だった。」

こういうパターンもありますからね。

私は1回だけありました。楽しみにしていたものが作話だった気付いたときのがっかり感たらもう…。

「うわぁ。作話だったのかよぉ~。そりゃないよぉ~」

自分で自分にがっかり感が半端ありません。勝手に期待して勝手に沈むなんて本当に厄介な自分だなぁって思いましたね。

でもまぁ、ヤサグレ作話は、今回のエピソード以降は1度も起きていません。また期待してがっかりさせられるのも1度だけの経験です。

今は記憶力は正常に戻っていますし、もう作話で悩まされることはないでしょう。私自身も周囲も。

いや、ほんと、記憶障害って厄介ですよ!

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