高次脳機能障害を自覚していて、記憶障害のある当事者が恐れていること…
私の場合は
「約束を果たせないこと」
です。
なぜかというと
「信用を失い相手にされなくなるから」
だから、約束を忘れないように、必死にメモを取ることにこだわります。しかし日常生活の100%をメモすることはできません。必ず漏れがあります。その漏れと記憶障害がぶつかった時に、約束を果たせなくなります。
信用を失うのが怖くて根を詰めるとさらに失敗をします。どんどん深みにはまります。
たぶん私だけがそうなるわけではないと思いますう。高次脳機能障害で記憶障害になった人の人の誰もが通る道だと想像しています。
その道を通るとどうなるでしょうか?
「約束を忘れて人に迷惑をかけるくらいだったら最初から何もしない方が良い」
と、心が折れてしまう人もいてもおかしくはないです。でもその先は引きこもりの世界。社会復帰が遠のいてしまうと思います。だから頑張って歯を食いしばって戦い続けなければなりません。
私は見かけがのんびりしています。
障害が酷い時には輪をかけてのんびりしていました。障害ゆえに行動がおそくなっていたからです。言葉を話すベースも非常にゆっくりでした。覇気もありません。
「ゆっくり霊夢と魔理沙」っていますよね?あれぐらいのペースで、腹に力が入っていないフラフラの状態で話をしていたと思います。
仕事を再開した時も、ゆっくりとした話口調でした。まだ幻覚を見ているような状況でしたし。
ゆっくりとした口調でしか話せないのですが、そんな私を見て「当事者意識が無い」なんて感じた人もいたようです。
「マイペースでのんびり。どこか他人事に見えて当事者意識が感じられない。」そう見えていたと思います。
でも心の中は全く逆です。信用を失わないように必死にもがき苦しんでいました。時間の流れが私と周囲とでは違い過ぎていたのです。
本当に本当に苦しかったです。焦るなと言われましたが、焦ります。本当に焦ります。
高次脳機能障害は見えない障害と言われています。
一見しただけではどこに問題があるのが分かりません。
でも当事者は確実に苦しんでいます。
脳機能が原因の障害への苦しみ
信用を失う恐怖
この対人関係での二つが常に私を苦しめてきました。
…いや、今も苦しいです。
周囲には見えない苦しみが、高次脳機能障害の当事者に常に襲っているのです。