全人間的復権とは|高次脳機能障碍の当事者が考えてみた

全人間的復権とは|高次脳機能障碍の当事者が考えてみた

ある日、私のツイートがめっちゃ褒められていました!うれしいです。こんなやり取りです。


Twitterで言語聴覚士さんから褒められています!やったー!!
でも気になるキーワードがあります。
【全人間的復権】
…???…なんでしょう。初めて聞く言葉。
きっと「全人間的復権」というのが、私が褒められた鍵なのだとは思うのですが…全く知識が無くて何を意味しているのかが分かりませんでした。
でも、なんかすごそうだし、知らないことは調べなくてはなりません。いい言葉っぽいし。新しい知識を得るのは大好きだしね!
というわけで、言葉の意味を調べてみました。

私にとっての全人間的復権とは何?



調べながらマインドマップにまとめていきました。こんな感じになりました。自分が理解するためにも整理してみましょう。

全人間的復権をググってみた

「全人間的復権とは」みたいなキーワードで検索してみました。ざっくりとこんな感じでした。

1.
障害を持った人が身体的・精神的・社会的・職業的・経済的に能力を発揮し人間らしく生きる権利のことであり、それを目指して行われるのがリハビリテーションであるとされます。
2.
「リハビリテーション」とは障害のある人の「全人間的復権」、すなわち、障害(生活機能低下)のために、人間らしく生きることが困難になった人の、「人間らしく生きる権利の回復」である。 このように、リハビリテーションの理念に初めから「権利性」の思想があったことが非常に重要である。

素人がいろいろ調べた結果、こういう考えにたどり着きました。

全人間的復権の言葉を私なりにまとめると

  • リハビリとは元の状態に戻すことではない。
  • リハビリとは失った能力の代わりの能力で普通にやっていけるようにするのが目的。
  • だから病前の状態に戻る必要はない。元々出来ていたことが出来ればいいのだから。
  • 代替手段でカバーするのがポイント

全人間的復権の意味をググって初めて知りました。これがリハビリの意味だったのかぁ…って。
発症から1年と4か月たった今では「なるほどなぁ」「その通りだなぁ」って感じています。
でも、当事者がこの考えを受け入れられるようになるのって、相当の時間が必要だよねぇ。とも思いました。
まず私自身がそうですし。病気をして高次脳機能障害になってリハビリの話を聞いたとき

  • 「リハビリさえ受ければ元の状態に戻れるんだ!」
  • 「絶対に元の状態に戻ってやるぞ!」

って思っていました。
逆に言うと「リハビリをしても病前の状態に戻れないのなら。リハビリをする意味がないじゃないか!」という考え方です。
リハビリを終えた今の状態で過去を振り返ってみれば、「リハビリとは元の状態に戻すことではない」に合点がいきます。
でも渦中にいるときは到底受け入れられないだろうって思いました。今振り返ってもそう思います。あまりにも残酷すぎますから。きっとここが障害克服のポイントなんだろうなぁ…

高次脳のリハビリは現状把握が目的なの?

「リハビリとは元の状態に戻すことではない」この一言はショッキングです。私に限らず、当事者ならだれもががっかりするんじゃないでしょうか。
でもすっごい重要なポイントなんだと思います。だからもうちょっと掘り下げます。
がっかりする理由ってなんだろうなって振り替えると、きっとここなんだろうなって思いました。
当事者とリハビリセンターが考えている目標が違う。
もしかすると同じゴールを目指しているのかもしれないけれど、私自身は突然障碍者になって嵐のような状態。大パニック真っ只中です。絶望感たっぷりのどん底。どん底過ぎて幻覚みたいなのまで見ていましたし。元に戻りたくて藁にもすがりたい思いなんです。
その時に千葉リハから言われた言葉が…
「リハビリは現状把握が目的です」
…?最初意味が分かりませんでした。
たしかに現状把握は大事です。状況を認識する。目標を定める。だからこそギャップが明確になる。どのように階段を上っていけばよいのかが割り出せます。具体的な代替手段が見えてきます。
うん。理論的にはわかります。正しいです。間違っていないと思います。
でもね…私自身は代替手段で良しとする事は望んでいませんでした。完全に元通りになりたいのです。元通りになりたいから心理検査、グループリハビリ、作業療法となんでも受けたかったのです。
大事なことなのでもう一度言います。
「代替手段を活用するのではなくて、障害を持つ以前の自分に戻りたい!」
私が望んでいたことはコレなんですよ。

絶望の中でさらなる絶望を感じさせた言葉

元に戻りたい…そんな希望を持つ私を、さらに突き放す言葉がありました。
「回復しても100%の以前の自分には戻れませんよ。」
この言葉は誰が最初に言ったのでしょうか。とりあえず妻には何度も言われています。墓を暴いて死者に鞭打つような言葉に思えました。
どんなに辛くても努力すればきっと元に戻れるはず!そんな希望を持つことを全否定されたような気分になります。だけど、この言葉を何回言われたか…。

高次脳のリハビリのゴールとは?

高次脳機能障害のリハビリのゴールは「自分を理解すること」だったかな?イマイチ定かではありませんが、こんなことを聞きました。
では自分を理解するとはなんでしょうか?それは「外見は変わらないけれど、中身が入れ替わっていることを実感して認める。」なのだと思います。確か千葉リハでの診察の時に運転免許がらみで言われました。
これね…
「そうだよねぇ。記憶障害、注意障害、遂行機能障害って心理検査で結果が出たしねぇ…、」
って頭では理解できているんですよ。でも実際は受け入れていないのです。
自分を理解するのって相当難しいと思います。最大の山場かもしれません。だからゴールなのかな?

なぜ高次脳のリハビリのゴールを目指す必要があるの?

障害を持ってから1年と4か月。「リハビリとは日常生活が困らないようにするためにするのだ。」と考えるようになりました。
そのためには「欠けてしまった能力を補う手段を割り出す必要がある。」なんでしょうね。
今自分ができることと、自らが設定した目標を照らし合わせる。
照らし合わせることで差が明確になる。差が明確になれば、どのようにして差を埋めればよいか…を埋める手段を考えられる。そんな流れなのかなと思いました。

ここで疑問点。高次脳が酷くても「俺、全然不便に感じていないよ!」って本人が思うのなら、リハビリは…どうするのかな?しないのかな?でも自分が障害を持ったことを理解していない人もいるし…どうなんでしょうね?

どうやって高次脳機能障害を克服するか

現状把握、目標値設定が出来たら、手段の設定ですね。ここが千葉リハの経験と実績からベストな手段を推薦されるのだと思います。
私の場合はこんな感じでした。

1.現状把握(高次脳による障害の状態)

私の場合はこんな状態でした。この二つは運転再開時に医師からもさんざん指摘されたポイントです。

  • 疲れやすい。疲れると障害が酷くなる。
  • 慢心からくる油断の傾向がある。油断はミスを誘発する。

指摘されると合点がいきます。まさにその通り。ぐうの音も出ません。よくもまぁ私の現状をきっちりと見抜いたものです。恐ろしい精度にびっくりです!

2.目標設定(これから何をしたい?)

  • 運転再開

インフルエンザ脳症を発症して救急搬送された直後から目標はただ一つでした。
「運転をしたい!」
この一点のみです。ちなみに免許を取ったのは5~6年ほど前。相当遅いです。でも運転が大好き。週末は必ず長距離ドライブもしくは家族でお出かけ。そしてブログを更新!こんな生活を送っていました。
運転再開こそが私の社会復帰の第一歩です。

3.手段(こうして目標達成しよう)

多くの心理検査や作業療法での観察。そして診察。これらを経て、目標である運転再開を達成するうえで、私の弱点となるのは…

  • 疲れ
  • 慢心

この2点に集約されると分析されました。
これにどう対応するにはズバリ「疲れたら自発的に休む」「疲れる前に休む」が最善という結果になりました。
確かそうだと理解しています。運転だって仕事だって、疲れる前に休憩を取ることで病前のようなパフォーマンスを維持できるわけですから。
でも疲れをコントロールするのってとても高度なスキルなんですよね。
病後、私は疲れても「疲れたことが理解できない」そんな状態でした。その結果、飯も食わず睡眠もとらず休憩も取らず、倒れそうになりながら鬼のような表情になり、仕事を中断できずにいましたから。
これってかなり厄介です。命にかかわります。そういう状態だったんですよね。
障害を負ってから1年と4か月が過ぎて、疲れる前に休めるようになりました。慢心はどうなんでしょうね…とりあえず今は「不安が強い」です。常に不安が心の中にいます。でもふとした瞬間に慢心が顔と出しているんじゃないかなぁ…?
今後の私のテーマは「疲れと慢心」をどう自覚して、どうコントロールしていくか。なんだろうなって考えています。
以前は慢心していても乗りこなせる能力があったんだと思います。でも今は障害があります。慢心をしていては転びます。以前とは中身が変わっているんですよね。
それを自覚しろってことなんでしょうねぇ…(と頭では理解しているのですが…)