回復するほどに実感した障害克服の第一歩とは

回復するほどに実感した障害克服の第一歩とは

高次脳機能障害になって3年と2ヶ月かな?だいぶ病前の生活を取り戻せてきています。…まだまだ100%完全にはほど遠いですが。
病前に行っていた活動以外にも、新しいことへのチャレンジも行っています。元々新し物好きだった性格が功を奏しているようです。
少しずつ。少しずつ。確実に脳の機能が回復しているのがわかります。こうして振り返ると脳の回復は本当にゆっくりですね。一気に元に戻れはしないようです。これはどの本にもそう書いてあるし、千葉リハの先生や療法士さんからも何度も言われてきました。
当事者としては「そんなことはない!どんどん元に戻ってみせる!」って息巻いてきました。でもやっぱりそんなことはありました。脳の回復は本当にゆっくりでした。
まず、無理に病前と同じことをしようとすると失敗します。できません。本当にできません。無理にやると記憶障害と注意障害の影響でぐるぐると同じことをやり始めてしまいます。
何故ぐるぐる同じことをするのか?二つの原因に気づいています。一つはやったことを本当に忘れてしまうから。作業が終わっていない認識なので自然と同じことを繰り返します。よく同じ話の内容を何度も繰り返し語る人っていますよね?あれと同じです。この場合は自分が喋ったことを忘れているのだと思います。
もう一つは本当にやったのかどうかが不安で同じことを繰り返してしまうというのがあります。前者と同じように思えますが違います。前者は意識せずに同じことを繰り返した結果です。後者は「不安」という感情に支配されて同じことを繰り返してしまうのです。
いずれにしろ同じことを何度も何度も繰り返します。どこかにメモでもしておけば良いのかもしれませんが、メモをしても同じです。そのメモの内容が正しいのかを確認するために、同じことを繰り返します。さらにいうとメモをした事実そのものを忘れてしまいます。だから同じことを繰り返すのです。
高次脳になったらメモを取る。メモリーノートを推奨されますね。でも記憶障害状態ではメモリーノートを取るのも難しいと思います。そもそもメモリーノートを書いていることを忘れてしまう有様ですから。覚えていたとしてもメモリーノートのどこに何を書いたのかも忘れてしまいます。それどころかメモリーノートをどこに置いたのか。メモリーノートの存在そのものも忘れてしまいます。そんな有様でした。
私は千葉リハからメモリーノートを取るようにアドバイスされる前からノートにメモを取り続けてきました。入院した当日からですから大学ノート10冊以上になりました。でも結局はほとんど活用はされていません。返って混乱の元になったこともあります。
ちなみに今はメモリーノートは取っていません。が、EXCELや付箋で予定を管理しています。気づいたのですが、高次脳機能障害がひどい時は過去の記録を取り続けていました。でも今は未来の予定を管理するのに使っています。この変化には何か意味があるのかもしれませんね。
私はメモを取り続けました。何故かというと忘れるからです。忘れると困るからです。何故困るのか?周りから信用を失うからです。信用を失わないためには無理をしなければなりませんでした。記憶障害で新しい物事を覚えることができません。それでもさも覚えているように振る舞う必要があったのです。
だからメモを取り続けました。できないことをできると言い続けてきました。早く元の世界に戻りたいからです。千葉リハの脳神経内科の先生が私を診断してこう言いました。
「あなたの障害は分かりづらい」
私はどうやら人から評価されるシーンでは私は本来の能力以上の力を発揮するようです。私の障害を知らない人から見たら私は普通の人に見えるかもしれません。
でも実際は違います。自宅にいる時。油断している時。疲れている時。そういう時はモロに障害が現れます。忘れます。思い出せません。このギャップが激しいの私の障害の特徴です。
相当無理をしてきました。障害を隠すために。廃人直前レベルまで頑張りました。医師からは「それ以上頑張ってはダメ」と言われました。それでも無理をしました。グダグダになりましたが。
全ては「早く元に戻りたい」という焦りの気持ちからの行動です。そんな私が今振り返って感じること。それは…
「そんなに無理をしなくても良かったな。」です。
っていうか無理をして状況を悪化させた方が多かったと思います。無理をした理由は焦りからです。
つまり「焦って無理をして状況を悪化させてきた。」となります。よくないですね。周りには散々迷惑をかけてきました。
今の私だったら、発症直後の私にこうアドバイスをします。
「今は行動をする時ではないよ。強く焦っていると思うけれど、行動するほどに傷口が広がるよ。今行動すると必ず後悔につながるよ。」
障害を負ったらなるべく状況を悪化させないように、静かに静かに我慢する。可能な限り行動は抑える。甘い誘いの言葉(例えば新しい活動にチャレンジしてみないか!など)こういうのにも乗らない方がいい。とにかくじっとする。
ではどのタイミングで行動をすると良いのか?になるけれど、自分の行動の矛盾に気がつけるようになった時かなぁ?なんて思いますね。障害の自覚ってやつですかね。
高次脳機能障害の自覚ってかなりハードルが高いと思います。頭では自覚しているつもりでも現実では自覚できていません。そういうものです。少なくとも自分自身では自覚しているかどうかの判断をつけるのは不可能です。高次脳機能障害を自覚しているかどうかの判断は家族や近しい人たちがすべきですね。っていうかその人たちにしかできません。
高次脳機能障害になったら無理はしない。絶対にしない。焦らない。早く元の世界に戻りたくても戻れません。戻った気になっているだけです。その分だけ周囲がフォローしています。周囲に負担がかかります。
自分で高次脳機能障害の深刻さを判断する方法があります。それは疲れを認識して休めるかどうかです。
自分で計画を立てて、計画通りに行動して、時間が来たら切り上げられて、しっかり休憩も取れるようになる。これができるようになって自立なのだと思います。
自立できるまでは決して無理はしない。何故なら無理をするほどに周りに負担をかけるだけだからです。