高次脳機能障害特有のイライラ解消と障害克服の実感

高次脳機能障害特有のイライラ解消と障害克服の実感

私は元々おっとり。のんびりした性格でした。
でも高次脳機能障害になった途端、常にイライラしてちょっとしたことでブチ切れるようになりました。時間とともに落ち着きを取り戻し、障害を持つ以前の自分と同じのんびりとした性格に戻ってきてはいますが…
周囲からは「性格が変わってしまったのか?」と不安がられたと思います。
良い方向に変わるのならまだしも、狂暴化しましたからねぇ。ちょっとした一言が逆鱗に触れて尋常ではないレベルで怒鳴るわけです。今まで何でもなかった一言が地雷に変わったのです。でも何が地雷になったのかはわからない。
とても厄介な状態でした。なぜ、一時的にせよ性格が変わってしまったのでしょうか?自分なりに振り返ってみます。

高次脳機能障害になって怒鳴り散らすようになった理由

高次脳機能障害になったとたん性格が変わった理由を振り返ると、「心に全く余裕がなくなった」というのが大きいと思います。この余裕とは時間的余裕と金銭的余裕なのかな?
一つ目の時間的余裕ですがなぜ無くなるのかというと、

  • 純粋に動作が遅くなった
  • 記憶が巻き戻るようになった
  • 失敗を恐れるようになった

上記の三つが大きく影響していると思います。
私ねある時、ふと気づいたんですよ「なんでこんなに動作が遅いの?」って。動作だけではないです「話す速度も遅かった」と思います。
動作は高次脳機能バランサーという高次脳機能評価のパソコンソフトを行ったときに気が付きました。マウスクリックの動作が数秒単位なんですよ。
普通は必要に応じたタイミングで「かち!かち!」ってクリックしますが、私の場合は「かち………かち……」このペースです。とてもこの道40年のシステムエンジニアの動作とは思えません。80才前後のお年寄りも遅かったです。(高齢者相手にパソコンの先生のボランティアをしていたので分かります)
話す速度もそうです。イオンに行くと「おなまえしーるだよーーーーー」という物凄いゆっくりなしゃべり方をする自動販売機のようなものがあるのですが、あれとそっくりでした。本当にゆっくりなんですよ。
病前から喋るペースはゆっくりでしたが、あれに輪をかけてゆっくりとしたペースでしゃべっていました。脳の回転がまったく追い付いていなかったのだと思います。
だって脳に傷がついて炎症を起こして、ガンガンステロイドを注入した直後ですものね…記憶も飛ぶし注意力も無くなるし、スグ疲れるし、動きも遅いし、話す速度も遅くなって当たり前ですよねぇ?
記憶といえば、記憶障害がメインなのですが本当に巻き戻るんですよね。巻き戻るってどういうことなのかというと、喋った直後に今喋ったことを忘れているんですよ。でも「これを相手に伝えなくちゃ
という意識はあるんです。するとどうなるかというと「同じことを何度も繰り返し話す」という現象が起こるんですよね。
「それ、きいたよ!」って何度、妻や子供に指摘されたかわかりません。私はシステムエンジニアです。頭を使う仕事をしています。記憶力も結構よい方だったと思います。それがもう…見る影もないほどに無残な状態に変わり果ててしまいました。残念で仕方がありません。
「動作が遅くてすぐに忘れる。」これが私の障害の状況でした。
さらには「目の前にあるのに気が付かない」という現象もあったかもしれません。こちらはあまり印象にはないですけれど。
確実にあったと言えるのは「目の前にあったものが見えなくなると、忘れてしまう」ですね。「あれ?あったはず」という記憶はのこっていたりするため探すのですが、何度も何度も同じ場所ばかりを探したりしてね。
探しているうちは良いのですが、仕事に関するものの場合「締め切り」や「対人」などの要素が絡んできます。すると追い詰められて焦り始めるんですよ。
「動作が遅いうえに記憶障害で同じことを繰り返して一歩も進んでいないのに、強く焦っている。」そんな目も当てられない状態になるわけです。普通の人なら一息入れたりするかもしれません。
でもそこは高次脳機能障害の悲しさ。「絶対にやらなくてはならない」という気持ちに支配されて止められなくなるんですよ。
止められないのにも理由があるんです。

  • ここで一呼吸入れたらすべてを忘れてしまう。
  • これ以上遅らせてダメな奴になったと評価されたくない。

私の感情を支配していたのは主にこの2点でしたね。恐ろしいんです。だからやめられませんでした。「疲れるともっと状況は悪くなるよ」「休憩は大事だよ」と言われてもブレーキにはなりませんでしたね。
思うに、高次脳機能障害で暴走してしまうタイプの人は、その障害を発動させてはならないのだと思います。常識では止められなくなるんですよ。止められたら障害ではないと思いますよ。
だから環境調整が必要なんです。障害を発動させる状況に障碍者を置かない。ここが一番大事なのだと思います。
でも、現実的ではないですよね。わかります。一日中張り付いて様子を確認して、常に先回りして障害物をどけておくなんて無理ですよ。
「周りはフォローできない。自分でもフォローできない。以前の自分だったら難なくできたことだったのに。」
こんな状態がもどかしい。なぜできないんだ。出来て当たり前の事なのに。
できない自分には価値が無い。悔しい。悔しい。悔しい。そして焦る。
それが怒りへとつながっていたのです。これが私が高次脳機能障害になって初めて怒鳴り散らした理由ですね。他にも怒りのパターンはありましたが、8割方はこのパターンでした。
「出来なくなった自分が許せない。」
「なぜなら自分の価値がなくなるから。

高次脳機能障害になってからのイライラは次第になくなりました。

そろそろ障害を負ってから2年8か月になるかな?
今の私はというとイライラすることは無くなりました。以前のように怒る事も怒鳴ることもありません。
「精神面では以前のほぼ自分を取り戻しているのかな?」なんて思います。「ほぼ」なのは「まだ自信を完全に取り戻せたかわからないから」です。
高次脳機能障害の症状である「感情の抑制が効かなくなる」の影響もあったのかもしれませんね。
ネットでは「精神障碍者手帳を持った無敵の人」というとても嫌な差別表現があります。
それはきっと私のように怒りの抑制が効かなくなった状態の人をさすのかもしれません。悔しいです。このようなレッテル張りは。でも事実でもありますね。辛いです。
でも、今はその状態は乗り越えています。また一歩病前の自分に近づきました。
イライラがなくなったのは、記憶がしっかりしてきて自分に自信が持てるようになったからだと思います。
「高次脳機能障害は日常生活がリハビリ」と聞きましたが、確かにそうかもしれませんね。
普通に生活をしてみる。すると障害特有の凸凹が原因で様々なトラブルを生じさせる。
でもトラブルが発生することで課題が見える化される。
日常生活の中で課題を解決する。課題が解決出来たら障害特有の不便さはなくなるので、障害でありません。
そしてまた新しい課題が見つかる。また解決する。
「高次脳機能障害の回復とは日常生活の中で見つかる不便さを自らの知恵で消していくこと。」
なのだと思います。