挑戦・失敗・動揺|高次脳の自分が嫌で仕方がない

挑戦・失敗・動揺|高次脳の自分が嫌で仕方がない

高次脳機能障害になってそろそろ3年目になろうとしています。障害前の自分に戻りたくて次々と現れる壁を乗り越えてきました。障害で出来なくなったことが再びできるようになりました。
でも、そんな自分が嫌になってきています。
出来ないことが出来るようになったのに何を言っているのだ?って思うと思います。私自身もこうして文章にすると「なんだそれ?」って自分の思考を疑問に感じてしまいます。自分を見失っているのかもしれません。
今になってなぜ自分を見失っているのでしょうか?きっと今は心に余裕が無いのだと思います。もしかするとずっと心に余裕なんてなかったのかもしれませんが、自覚するのに3年かかったのかもしれません。
「高次脳機能障害の方は引きこもりがちになる」と聞いたことがあります。その理由がなんとなくわかります。ちょっとしたことで動揺するんですよ。なぜ動揺するのかというと心に余裕が無いからなんです。超張り詰めたガラスのハート状態なんです。だから外からの刺激に敏感に反応してしまう。
なぜそれほどまでに心が張り詰めてしまうのかというと、やることなすこと失敗するからではないでしょうか?
誰だって失敗はしますけどね。ダメージの大きさが全然違うと思います。ものすごく打たれ弱くなっていますから。
それでも生きていくためには頑張らなければなりません。歯を食いしばらなければなりません。ハンデを背負う当事者の方は常に限界ギリギリのところで自分を励ましているのだと思います。
少なくとも私自身はそうです。
例えば私の場合、以前と違い仕事のミスが増えました。自覚があります。
どの様な仕事をするのか話を聞いたとします。で、私は説明を受けた通りの仕事をしているつもりなんです。でもね現実は違う。全く違う仕事をしていたりするんですよ。指摘されて初めて気が付くのです。
誰にでも起こりうる細かいものから、普通間違わないよね?レベルのものまで大小さまざまなミスを犯すようになりました。
ミスを起こさないためには確認が大事です。一番確実な確認は「人に聞く」それも「指示を出した人に聞く」ですよね。でも今の私はそれができません。
なぜなら「人に聞く」という行為そのものが恐怖の対象となっているからです。
健康な時はちょっとでもわからないことがあれば人に聞いていました。提案もしていました。「自分の方が正しい!あなたの指示のやり方がまずい!」そのくらいの気持ちがありましたから。
でも今は違います。
「指示の内容を理解できない自分が悪いのだ」
そう考えてしまうのです。
幸いにも考える力は落ちてはいないようです。記憶力は落ちましたが考えて組み立てて発想する力は元のままなんですよね。
これって能力のバランスが非常に悪いってことなんです。普通はこういうバランスの人ってあまりいないのだと思います。だから周りの人は私の能力の落ちた部分を基準にして、私の全体の能力をおしはかるんですよね。
私が落ちた能力はそれこそ障碍者レベルです。だから他の能力(発想力や計算力など)も障碍者レベルだと認識されてしまうのです。すごく悲しいですけれど。
このように一つの欠けた能力を基準にして周囲から接していられるとなにがおこるのか?すべてが恐怖に変わりました。相手が信用できなくなり怖くなったのです。
相手が信用できない。周囲が信用できないって悲しいです。このような考え方にとらわれると最終的には「自分の存在価値はない。これ以上ここにはいない方が良い」という考えにたどり着くんですよ。
だって、行動をすると失敗するわけですから。だったら何もしない方が良いではないですか。私がいると仕事がスムーズに回らなくなるんですよ。そんな私はいない方が良いですよねぇ。
最近の私の精神状態はこのような波になっているようです。
【元気が出る->仕事を頑張る->仕事に成功する->疲れる->仕事に失敗する->落ち込む->なにもしたくない。】
本来なら、疲れた時点で休めばいいんですよね。失敗する確率は減ると思います。でも休めないんですよね。月火水木金土日と一週間丸々働きづめなんです。なぜかというとお金が無いからですね。お金があればこんなに働きたくはありません。
もししっかりと休めるのなら仕事のミスも減るのだと思います。でも休むと収入が減る。生活ができなくなる。まさに負のスパイラルに陥っています。
もうね。3年前に病気をしてから今までずっと限界ギリギリで生きています。

なぜ障がいがあるのに、休みなしで働き続けなければならないのか

一言でいえば「不安」だからです。仕事をしない状態が恐ろしい。だから仕事をし続けています。
何かをすると失敗します。注意障害と記憶障害がありますから。疲れると頭の中で情報がすり替わってしまうんですよね。
「この障害ゆえに周りに迷惑をかけている」って自覚があります。
障害は本当に厄介です。指摘されても、ミスをわかりきっていても、対応がとても難しいんですよ。
ミスがあれば指摘するのは当然です。でもミスを指摘されてミスが起こらないように工夫しても、ミスが起きてしまう。辛すぎです。本当に苦しい。
「以前から同じようなミスはあったよ。障害は関係ないよ。」
と言ってくれる人もいます。それが事実かどうかわかりませんが、こういってもらっても今の私の精神状態ではなかなか踏ん張れないんですよね。自分の心を支える軸が折れてしまっているんですよ。
今まで楽に出来ていたことを難しくとらえるようになってしまったんです。これって「高次脳機能障害者は頑固になる」ってやつなのかもしれません。とにかく人の話を難しくとらえてしまうようになりました。ひとりで「うんうん」悩み始めてしまうのです。
これはきっと「記憶力が落ちた」という負い目から来ているのだと思います。
常に「自分はダメな人間なんだ」という気持ちがあります。

高次脳になった自分はダメなのか。これからどうなる。

「障害になっても経験がある。きっと元通りに仕事が出来るはずだ!」
「ほらやっぱりできるじゃないか!あれもできる!これもできるぞ!」
そう自分を励ましながら3年やってきました。踏ん張ってきました。実際だいぶできていると思います。点数にすれば80点。自己評価高いでしょうか?
でも細かいミスが消えません。今の仕事は1つのミスも許されない仕事なんですよね。だからプレッシャーが強いです。だからミスをしないための工夫をさんざん繰り返しています。
それでもミスが出る。
私の脳の技術レベルや発想力は完全回復していると思います。
でも注意力と記憶力の低さがそれを台無しにしています。能力のバランスがとても悪いのです。
「もう少し楽になりたい」
最近はそう考えるようになっています。
でも同じように
「完全回復して見返してやりたい。いや障害を負う前以上の事をやってやりたい!」
という気持ちもあるんです。
今、二つの気持ちがせめぎあっています。
まだ心は折れていないのかもしれません。でも今の自分は大嫌いです。