高次脳機能障害って何?一般論ではなくて当事者が個人的な経験を解説してみる

高次脳機能障害って何?一般論ではなくて当事者が個人的な経験を解説してみる

きっとあなたは病院や支援センターのホームページを色々と見て回った方だと思います。もしくはツイッターの私のフォロワーさん。
ということは、記憶障害や遂行機能障害の教科書的な知識はすでに知っているはずです。
でも「じゃぁ生活や家族。障害を受けた本人はどうなるのよ?」といった自分たちに直接関係する情報はあまり見つけられていないのではないでしょうか?
そう考えるのは「そもそも高次脳機能障害の当事者がブログを書くのは難しい」もしくは「家族がブログを書くのも難しい」という背景があるからです。ブログって書くの難しいですからねぇ。特に高次脳機能障害でブログを書くのって至難の業だと思います。こうしていま私が書けているのは奇跡だと思いますよ。
私は病気をして救急搬送されているときに「今の体験をブログにしよう」と考えていたくらいの変わり者です。退院後、一か月ほど経過してからブログをに体験を書こうとしたんですよね。でも書けないんですよ。不思議ですよね?自分でも理由が分かりませんでしたよ。それが高次脳機能障害なんです。
こんな情報は当事者へのヒアリングぐらいでしか引き出せないと思います。超個人的な話になりますが、そういうのが欲しいのだと思います。この記事を見ている方は。
というわけで「高次脳障害って何?どんなふうになるの?」を書いてみたいと思います。

高次脳機能障害とは実際にどうなるのか?

高次脳機能障害について思いつくことを書きならべてみます。超高人的な内容ですから、その点だけはわすれないように!

言われたことを三歩歩くと忘れる

うそのようで本当にあります。忘れます。すごい勢いで。夕方はダメダメでした。
最近は言われ無くなりましたけれど…。
一時期は(じきにすると発症2年ほどかな?)ちょくちょく妻から指摘。
事実だし、妻も明るい感じで言ってくるので、笑い話的な指摘でしたね。ストレスには感じていません。
自分でもだんだん自覚するようになるんですよね。
忘れちゃったら「あれ?今言われたことなんだっけ?わすれちゃった!」ってそのまま伝えます。
妻は「うおおおお!」ってびっくりする表情をしてくれますが笑っています。
記憶障害って結構辛いものですが、笑い話に変換できるのって幸せだと思っています。

とんでもない勘違いをしまくる

この障害はかなりやばいなぁって今でも思います。
私の障害の最大の特性なんでしょうね。とんでもない勘違いって。
どういうことかというと、少し前の出来事を覚えている風に語るけれど、全く違うことを語っている。ってやつです。
脳から記憶を取り出す際に、変な風に取り出してしまうんですよね。これは千葉リハの検査でわかりました。この現象が起こるのは2つの原因がある時です。

  • 油断している時
  • 疲れている時

だから対策は疲れないようにする。気を付ける。この二点になるんですけれど、ずっと気を付けているのなんてねぇ…無理です。難しすぎ。
でも仕事なんて絶対に間違えられませんしね。「注意障害があるからお仕事できません!」なんて言えませんよ。
でもミスは絶対に犯せない。だから私は仕事に関してのみ、綿密に勘違いを防ぐ工夫を施しています。
おかげでミスは起きていません。

動作がとてつもなく遅くなる

なぜ動作が遅かったのか?理由が全く分かりません。
障害を負ってからちょうど半年間、動作がとても遅かったです。話すこと、PC操作、とにかく遅かった。
でもねある日を境に突然電源がONになったかのように、以前の能力を取り戻すんですよ。これがとても不思議でした。
ちなみに動作が遅い時は動作が遅い自覚はありません。動作が速くなるのはある日突然やってきます。本当にびっくりしますよ。その瞬間は!
「あれ?なぜ今までこんなに遅かったの?」
そう自覚するんですよ。

怒りや悲しみの度合いが極端

感情失禁というやつですね。怒りや悲しみの感情が極端になるんですよね。
これが一番メンタルに来ますね。今はもうこの障害はありませんが、思い起こすと嫌な思い出しか残っていません。何もいい事がないですよ感情失禁って。最悪です。
どのくらい最悪化というと、「家族を疲弊させる一番の原因は感情失禁ではなかろうか?」とこの3年間ずっと考えているほどです。
感情失禁だけは…とくに怒りの感情失禁だけは避けたいです。

あり得ないレベルで疲れやすい

もうね。この疲れやすいのって本当に大変でしたよ。音と光の刺激だけでも超グッタリになりますから。
運動でも回復していくそうですけれど…。とにかく最初の頃は何もできなくなりましたね。毎日ゴロゴロ寝てばかりいましたよ。
仕事もできませんし、近所のイオンへのお散歩もしんどかったです。
っていうか入院中は電話をするだけでも「ハァハァ…」と息切れしてぐったりしていましたから。MRIの爆音の中でもぐっすり熟睡できるほどですよ、この易疲労って。
毎日毎日尋常ではないレベルで疲れていました。
ちなみに運転再開するうえで最大の障壁となっていたのも易疲労でした。易疲労がある限りは運転再開は無理ですね。

時間によって能力が変化する

最近の私の障害攻略テーマです。
夕方以降の記憶が怪しいです。もしかするとすでに正常になっているのかもしれませんが、周囲の人たちって「失敗の指摘はするけれど、成功の指摘はしません」当たり前ですけれど。
だからよくわからないんですよね。自分の障害がクリアできたのかどうかが。今一番心配なのが夕方以降の疲れがたまった時の記憶力なんですけれどね。
もうなおったかなぁ?っていつも思っていますが。

異常に固執するように見える

「高次脳になると頑固になる」そうですね。遂行機能障害ってやつなんでしょうね。
私的には未だに頑固になった実感はわいていません。妻は「頑固だ」といいますけれどね…
頑固だというよりも「再現しやすい方の記憶を優先して取得し行動している」ために、周囲からはそう見えてしまっているのかもしれません。
気分的には固執はしていません。最適解が提示されたらすぐに切り替えられるんですよね。それなのに「頑固モノ扱い」をされるのはとても悔しいですね。

超孤独になる

高次脳機能障害になると間違った行動に気が付かなくなるようです。症状が酷いほどに。
だから失敗を恐れて行動をしなくなるんですよね。そうすると周りの人たちとのつながりが切れていくんですよ。最終的には独りぼっちになります。
「繰り返す失敗から生まれる臆病な気持ちに負けると超孤独になる」
このような流れなのだと思います。孤独は本当に辛いです。お先真っ暗感でいっぱいになります。私も散々孤独を味わいました。もういやですよ。本当に。
高次脳機能障害者へのフォローで最も手厚くして欲しい部分だと思いますよ。
絶対に孤独にしてはいけない!場が必要です!!!

自分の事を棚に上げるようになる

自分の事を棚に上げるようになる…なんてなんと図々しい!って思うかもしれませんね。
これねぇ棚に上げているように見えるのですが、実際は棚に上げているのではないんですよ。そう見えているだけなんです。
実際は「自分の失敗をすっかり忘れている」のです。そのうえで「正論を語る」
そうするとね「まるで自分事を棚に上げているように見える」という感情を周囲に与えてしまうんですね。
すっごく悲しいですよコレ。忘れたくて忘れているのではないです。以前だったら完璧に覚えているんですよ。以前の調子で行動すると「もう昔とは違うのだから!」って指摘されるけれどねぇ。
結構屈辱を感じます。明らかに見下されていると感じる瞬間ですね。
当事者に「棚に上げている」って言葉を使うのはかなり危険かもしれませんね。劣等感植付攻撃にもなるので、命中するとメンタルをガッツリと削られます。

私は油断すると変な人にみられてしまう

記憶障害って悲しいですよね。たった今していたことをあっという間に忘れてしまう(正確には覚えているけれど思い出せなくなる)のですから。
すると行動に一貫性が無くなりますね。はちゃめちゃになるんですよ。
自分自身では一本の筋が通っているように思えているのです。でも周りから見たら…
悲しいです。悲しすぎます!そして屈辱。人によっては自信喪失の原因になりますね。

働くのが怖い

失敗するのが目に見えているんですよね。散々経験しているんです。自覚しているんです。だから働くことに恐怖を覚えるようになります。
逆に、発症当初は障害の自覚が無いですからね。「退院したらすぐに働く!」なんて平気で考えているんですよね。
でも実際には失敗しまくる現実が待っています。どんどん失敗をして迷惑をかけます。だから恐怖を感じるようになります。
高次脳機能障害は失敗を繰り返して恐怖を覚えてからが本当の闘いなのかもしれません。

絶望感に苦しむ

行動して失敗しまくると恐怖を覚えると書きましたが、恐怖以外にも感じるものがあります。
それが「絶望感」です。
だってやってもやっても失敗しまくるんですからね。怖いだけじゃ済みませんよ。「自分は何をやってもダメなんだ。もう終わりだ。」って考えるようになるんです。
たぶん高次脳になってぶち当たる壁で一番分厚くて高い壁です。
すっごい怖いですよ。閉塞感がすごいですよ。井戸の底に落ちて出られなくなった間隔を覚えますよ。過呼吸になりますよ。脂汗をかきますよ。眼が泳ぎ始めます。そして涙がボロボロ。
最後にたまりかねて「あああああああ!」と大絶叫です。
助かりたい助かりたいと逃げているはずなのに、行きつく先は燃え盛る炎の中なんですよ。パニックを起こしました。人生の中で一番命が危なかった瞬間だと今も考えています。
もちろん病気そのものも怖いです。でもその後に訪れた心の病気も怖い。危険です。本当に危険ですよ!
もし身近に退院したばかりの人がいたら、絶対に目を離さないで欲しい。
今まで当たり前に出来ていたことが「なぜかできない」という壁にぶつかった瞬間が一番危険です。

高次脳機能障害になったらずっとお先真っ暗なのか?

障害というくらいだから、一生脳が不自由なまま…というわけでもなさそうです。
脳機能は少しずつ少しずつ、超ゆっくりペースですが回復するそうです。私が定期的に診察を受けている千葉リハをはじめ、いろいろな所でこの情報を目にします。
私自身も、少しずつですがやれる範囲が広がっている実感もあります。
最初のころなんて「運転なんてとんでもない!」といった状態でしたけれど、今は普通に運転しまくりですからねぇ…。車の走行距離は7000Kmを超えましたよ。もちろん無事故無違反のゴールド免許維持ですよ。
個人差はあるでしょうけれど、私のように復活する人もいます。(まだまだ回復しきっていない部分もありますよ。ガッツリと高次脳機能障害特有のミスが出たりもします。)
障害は工夫でカバーできるものも沢山あります。代替手段やフォローする手段など。

  • 自分の障害を自覚して弱点を認める
  • その弱点をうめて他の人と同じレベルに戻す方法を考える
  • 実践する
  • 無理のある部分、失敗した部分を再び弱点として認める
  • 対策を繰り返す

いわゆるPDCAを回すというやつですかね。
【高次脳機能障害はPDCAを回して克服せよ!】
なんてキャッチフレーズが私にはぴったりなのかもしれません。退院して壁にぶつかって発狂状態になった頃から、高次脳機能障害のPDCAを回してきたような気がします。おかげでだいぶいい感じに生活が出来るようになりました。
つまり、お先真っ暗ではなく、【努力すれば報われる】という挑戦の繰り返しですね。
高次脳機能障害ってそういうものなのだと考えています。
私の場合はですけれど。