高次脳機能障害で出来なくなったことは再びできるようになる

脳に障害を負ってから3年と9か月目に突入です。インフルエンザ脳症に罹ったのは2019年1月。もうすぐ4年目。
障害を負った当初は本当に出来ないことだらけでした。最もひどい時は自分が話した内容を、話した瞬間に忘れてしまうレベルでした。目のまえにあるモノを目のまえで隠されても「どこに行ったのだろう?」って探し始めるし。
「今この瞬間のみで生きている」といった状態。この瞬間に起こった出来事は、次の瞬間にはもう覚えていないのです。それはもう驚きますよ。周りは。
こんなことを書くと、「覚えていないのなら、覚えていないことも覚えていないのでは?」なんて疑問もわいてきますよね?
今は大丈夫です。最近の事は覚えています。思い出せます。
ただし昔のことは思い出せません。だから妻から聞いた話の内容が元になります。この辺りはちょっとややこしいですね。
それはさておいて…。インフルエンザ脳症を発症して入院していた頃が、高次脳機能が最凶にメタメタな状態だったわけです。完全に認知症の老人状態でした。恐ろしい話ですが、拘束具の着用も考えられていたそうですし。
入院している部屋から出たら一人では帰れません。腕には部屋番号を記入したリストバンドを常に付けていました。「506」って書いてあったかな? 
1日に何度も何度も見返すんですよね。「自分の部屋は506号室だ」と。でもね暫くすると忘れてしまうんですよ。思い出せないのです。かろうじてリストバンドが視界に入るため「そうだ、ここに書いてあった」とは思い出せます。だから部屋が分からなくなることはありませんでした。
でも「506号室」は最後の最後まで覚えられなかったと思います。ちなみに30日間入院していました。それでも覚えられませんでした。
入院中はこんな状態でしたが、病識が全く無くて「退院したらスグに元のように仕事を再開できる」と考えていました。全く自分を疑っていませんでした。

退院直後から今に至るまでの障害の変化

退院した直後ですが…。それはもう何もできなくなっていて、大ショックを受けまくり。パニック起こしまくり。地獄のような毎日を送りました。
そんな私だったのですが、今はどうなっているでしょうか? 相変わらず何も覚えられない状態でしょうか?
いいえ、違います。かなりのレベルで病前の自分を取り戻せている気がします。
記憶力は疲れがでる夕方以降が未だに怪しいです。でも、それ以外の部分。例えば元々体に染みついているスキル的なものはもう大丈夫。これはもう完璧だろう?って思えるのです。(…退院直後からいつも思っているのですけれど。)
どういうスキルを取り戻せたのでしょうか?
一言で言うと「いやいやいや、そういうことができるのに、本当に障害があるのですか?」というレベルのスキルになるのかな? 知らない人が私の様子をみたら「本当に障害があるの?」って感じるかもしれないです。
…でも実際は障害はあります。
有りますが、出来ることも沢山あるのです。それは元々持っていたスキルたち。一時期は何もかもができなくなっていましたが、時間薬が効いてきたのか、再び出来るようになりました。
どの程度のものが出来るようになったのでしょうか。折角なので発症当初と比較して「おおおお!出来たぞう!」というもの。実感できた能力の変化の数々を書いていきたいと思います。
インフルエンザで重傷を負い、脳に障害負った私がどうやって脳機能を取り戻していったのかが分かります。それは、同じように今コロナなどの病気で脳機能にダメージ負った人の(周囲の方の)参考になると思っています。

脳に障害を負って記憶力0になってから、4年半もの間に何ができるようになったのか

一つ一つ書いていきます。注意障害、記憶障害、遂行機能障害に関連する能力たちです。

急性期

  • 何かをした記憶が断片的に残るようになった。
  • 妻との会話が少しずつ成立するようになった。
  • 意味の通じるメモが書けるようになった
  • 髄液検査時の麻酔が痛いと感じるようになった。
  • 血糖値コントロールの注射が「痛い!」と感じるようになった。
  • スマホででLINEができるようになった。
  • パソコンで検索ができるようになった。
  • 廊下を歩けるようになった。
  • テレビを見られるようになった
  • 少しだけ漫画を読めた。スグにギブアップした。
  • 虫歯が「痛い!」と感じるようになった。
  • コーヒーの匂いと消毒薬の匂いがするのに気が付いた。
  • 嗅覚が復活してから嗅覚を失っていた事に気が付けた。
  • 昼寝の時間が短くなった(それでもかなりの時間は寝ています)
  • MRI装置の形が認識出来るようになった。
  • 入院中の病室番号を思い出せる時があった。
  • 病院食のメニューを理解できるようになった。
今でも不思議な入院中の出来事。

  • 発症当日の記憶が殆どない。
  • メモ魔の私の手書き文字に力を全く感じない。それでもメモを取った。
  • しかしメモを取った記憶がない。
  • 早い時期からテレビが見れて、パソコンも使えるようになったけれど、長い間漫画本が読めなかった。
  • 痛みを全く感じなかった。
  • 匂いを全く感じなかった。
  • 痛みも匂いも感じない事に全く疑問を抱かなかった。
  • MRI装置の形を認識できなかった。
  • 意外と陽気に過ごしていた。でもちょっとの出来事で酷く動揺、落ち込み、悲しんだり。感情の起伏が激しかった。
  • 少しでも病院のルールにそぐわない人を見かけると許せない気持ちでいっぱいになった。

退院~現在の変化

  • 子供に手を引かれてイオンへ散歩に行けた。(最初は1日中寝てばかりでした)
  • 一人で散歩に行けた。
  • ご飯を食べても顎が疲れなくなった。
  • 元の体重に戻った。(入院時は45Kgほどやせてガリガリに。)
  • イオンに散歩に出かけても頭痛に襲われなくなった。
  • イオンに散歩に出かけても悲しくなくなった。
  • トラブルの連続だけれど病前の仕事を再開できた。
  • 最初はパニックを起こした仕事再開も徐々にこなせるようになった。
  • 毎朝襲われた過呼吸発作が起こらなくなった。
  • 毎朝襲われた悲しみの感情失禁が起こらなくなった。
  • 適度に休憩を挟めるようになった。
  • 時間が着たら仕事を切り上げられるようになった。
  • 以前のペースで仕事を進められるようになった。
  • 以前のようにお客をリードできるようになった。
  • 以前のようにお客へアイデアを提案できるようになった。
  • 妻と一緒に大学病院で診察を受けられた。
  • 妻と一緒に電車に乗れた。
  • 妻と一緒に千葉リハへ行けた。
  • 千葉リハのグループリハビリを受けられるようになった。
  • 千葉リハの作業療法を受けられるようになった。
  • 一人で電車に乗るチャレンジができるようになった。
  • 一人で電車に乗れない理由に気が付けた。
  • 一人で千葉リハへ作業療法を受けに出かけられるようになった。
  • 客先に出向く際に吐き気を感じなくなった。
  • お金への恐怖心が解消した。
  • 書けなかったブログを再び書けるようになった。
  • 天気が崩れても頭痛に襲われなくなった。
  • 運転再開のための検査受けられた。
  • 運転再開できた。
  • 自信喪失の二次障害が解消した。
  • まったく怒らなくなった。感情の起伏が元通りになった。
  • 自発的に行動できるようになった。
  • 長距離を運転しても疲れなくなった。
  • ゴールド免許取得。運転への自信を取り戻した。
  • 障害をカバーする仕組みを考え実践するるようになった。
  • 仕事への自信を取り戻せてきた。
  • 仕事をこなすペースが病前と同様レベルに戻った。
  • 昔同様にアイデアをアピールできるようになった。
  • お金を使う事への恐怖心が無くなった。
  • 色々なものに興味を持てるようになった
  • 将来を見て行動をとれるようになった。
  • 自分中心から周囲に目を配れるようになった
  • 子供のフォローができるようになった
  • 転職を考えられるようになった。
  • 仕事量を増やしてもペース配分できるようになった。
  • 仕事に追われなくなった。

出来るようになったことを時系列で箇条書きしてみました。どうでしょう?「これだけできてどこに障害があるの?」に見えますね。
実際は「うそだろ?」と言うところで「スポーン」と記憶が消えていたり、「何をやっているの?」と周りが不思議がるレベルのやらかしをしていたり。(そしてその事に自分だけが気づいていない)
高次脳機能障害って自分で理解はできます。でも周囲から見た自分と自分から見た自分は違うんですよね。この記事に書いたのはあくまでも自己評価です。元々私は「自己評価が高い」と言われています。千葉リハでもそのように診断されました。妻も同じことを言います。
だから、自分自身が気が付かないところでやらかしているのだと思います。これはグループリハビリで散々味わいましたし。

グループリハで一番印象に残っているのは、「自分は自信満々で間違える特性がある」と評価された点です。実際そうなんですよ。身に覚えが有りすぎてグウの音も出ません。

でも、実際に出来なかった事が出来るようになったのも事実です。ここに記した内容は鉄板な事実です。
急性期の最初の頃なんて「自分が話した内容を全く記憶できない」状態。記憶の心理検査では「評価不可能」でしたから。点数が付けられないほどに悪いんです。退院しても一人では生きていけないレベルだったのです。
それが今、車を運転しています。高速道路もジャンクションも平気。仕事も以前と同様。自分ではもう障碍者手帳はいらないんじゃない?なんて思えるほどです。
でも、実際は… なんですけれどね。 でも凄い治っています。治らないから障害なのですが、治る障害もあるのかなぁ? 
それとも障害じゃなかったのかな?
もしそうだとするなら、大学病院の脳神経内科と千葉リハの全否定になってしまいますね。確かにMRIには傷は写っていましたし、心理検査なんてどれだけ受けたか。もちろん全力で受けましたよ。運転再開に影響大でしたからね。
その結果が「高次脳機能障害」なんですよね。
脳は不思議です。治らないから障害なのに治ってきている気がします。
うーん???

千葉リハからはこのように伝えられています。
実際は脳に障害がある。障害は数十年かけてゆっくりと回復する。
私の障害の特性は「見えづらい障害」。それは「実際は障害があるのだけれど、経験や知識、発想で無意識に障害をフォローしている。」というものです。 

自分でも気が付けないレベルなので、「あれ?もう障害が治ったんじゃない?」って誤解しがちだけれど、実際は治ってはいない。
治ったぞ!って油断すると、とんでもないミスをやらかす。だから絶対に慢心してはならない。油断禁物。常に障害を自覚せよ。
こんな状態なんですよね。たぶん。これがまた結構しんどいですよね…。
でも出来ることは確実に増えています。自分への自信もだいぶ取り戻せています。
まだまだ障害と闘う気力は尽きていません。頑張ります!