元気そうなのにヘルプマーク|見えない障害への理解って…難しすぎるよね

元気そうなのにヘルプマーク|見えない障害への理解って…難しすぎるよね

電車内でヘルプマークをつけている人が「ヘルプマーク付いているだろ!そこどけよ!」と、優先席に座っている人に向かって騒いていたそうです。
たとえヘルプマークを身に着けていたとしても、大騒ぎ出来るくらい元気なら、優先席に座る必要は無さそうですよね。パット見た感じ普通の元気な人に見えたら、なおさらそう感じる気持ちはよく解ります。
でもそこがヘルプマーク対象者の辛いところでもあるんです。
ヘルプマーク
ヘルプマークって体の中に見えない障害を持つ人が付けるマーク。傍から見ると普通の人に見えてしまうケースもあります。が、やっぱり障害があるんです。ややこしいですよね。もうね当人ですら「何が何やら?」となってしまうような理解に苦しむ状況なんです。
一見普通に見える。そしてめっちゃ怒っていて元気そうなのに障碍があるってどういう事なのでしょうか?何がつらいのでしょうか?
今回は私が体験した事と私を例にお伝えします。ちなみに「全員がそう」ってわけじゃないので、そこだけ意識してくださいね。あくまでも私の経験の範囲内の話ですから。

元気なのになぜヘルプマーク?

電車の中で優先席に座っている人に怒るくらいなら、エネルギーが有り余ってあるようにも思えますよね。それなのになぜヘルプマークを付けているのでしょうか?それは高次脳機能障害が理由かもしれません。
高次脳機能障害とは記憶や物事を順番にこなすなどのハイレベルな脳の機能に不具合が生じてしまう障碍です。私はインフルエンザ脳症で海馬が傷つき記憶障害となりました。これも高次脳機能障害です。
高次脳機能障害の中には感情の押さえが効かなくなるという症状があります。感情失禁です。頭を怪我したら怒りっぽくなった。すぐ泣くようになった。そんな話を聞いたことはないでしょうか?
感情の抑えが効かないと「え?今ここで?なんでそれをする?」といった感じで普通なら空気を読んでやらないことを、ズバリやってしまいます。
高次脳機能障害は脳の障碍です。だから一見普通の人です。でもやっていることは「???」だから見えない障碍と言われるし、普通の人には理解が難しくて当たり前だと思います。

高次脳機能障害当事者の私もびっくり

感情の抑制が効かない
私自信「コレが高次脳機能障害なのか」と感じたエピソードがあります。
自分自信を理解するのは困難ですが人のことはよく見えるんですよね。それはグループリハ開始前の集合時間のときでした。
リハビリメンバーが廊下に集合していると、ちょうど目の前で小さな子供が歩行器を使って歩く練習をしていました。
その子は足がうまく動かせません。上手に前に進めません。とうとう泣き出してしまいました。
すると隣にいた方が一言
「うるさいな!!」
とても驚きました。今この瞬間の、この子の頑張りを目の当たりにしておきながら、それを言っちゃうんだ…?
確かに広い廊下なのに、わざわざ目の前にやって来てわんわん泣き始めちゃったけど…。ふつう言わないよね?
でも思ったことをそのまま口にしてしまう。これが感情失禁なのだと思いました。

私自信の易怒性はどうなの?

些細な声掛けで記憶が吹っ飛ぶ
「人の事ばかり言ってるけど、自分はどうなの?」って思われるかもしれませんね。
私も感情失禁がありました。怒りに関しては仕事がスイッチになっていました。
私は記憶障害のために、ちょっとしたことで仕事内容を忘れてしまいます。
たった今やっていることを見失ってしまい「あれ?今何をしていたんだっけ」となるんですよね。
この状況になると仕事が続けられなくなります。今何をやっていたのかを思い出すために、1年前に初めて仕事の依頼メールが来たところか振り返らなければなりません。
ちょっとしたことで何時間もかけて積み上げてきた記憶が消えてなくなるのです。一度ではありません。3度も4度も何度でもです。しかも同じ内容で。
まさに賽の河原状態。積み上げた石を鬼に崩されるのと同じ。何度も記憶が消えます。そして記憶が消えるたびに烈火のごとく怒ります。
さらにまずいことに、疲れるとさらに記憶力が低下するんですよね。だからなおさら止められなくなります。
「もうごはんだよ…」や「そろそろ休憩しなよ…」
記憶が消えるきっかけは、私を想っての声掛けです。
声をかけられた瞬間に記憶が全部消えてなくなるので怒り爆発です。机をバンバン叩いて「あああああああああ!」と大騒ぎです。
妻の「無理をしてまた倒れたら一生寝たきりになっちゃうんだよ!」という言葉も届きません。
抑制が効かなくて自分への怒りが止まらない
「これが出来ないのなら、一生寝たきりになってもいい!」
と意地になってしまい本気で死ぬ覚悟で仕事をし続けました。疲労してどんどん状況を悪くしながらです。
普段なら5分程度で終わる仕事が6時間かけても終わらないのです。こんなことは絶対に許せません。あってはならない事なのです。時間は夜中の0:00を過ぎていましたが、徹夜してでも完遂させるつもりでした。たった5分で終わる仕事を…。
妻も「もう止めない!」と泣きながら部屋を出ていく始末。私は一心不乱に何度も何度も途中で消えてしまう記憶をたどり続けました。
私の怒りは当たり前のことが出来なくなった自分自身に向けられ続けられました。そしてそれを邪魔する家族にも…。

高次脳…一見元気そうに見えても元気ではありません

頑張らないように頑張れ
高次脳機能障害って一見普通に見えます。元気に見えるかもしれません。
優先席に座っている人に怒れるくらいですからね。でも実際は違います。怒るのは「感情失禁」が原因だと思います。抑制が効かなくなっているのです。
「怒れるくらいなら優先席に座らなくてもいいんじゃ?」
って思うかもしれませんが、「易疲労」もあるんですよね。めちゃくちゃ疲れやすいんです。
例えば私は入院中は電話や漫画本の先頭1ページを目にしたとたんにでグッタリ寝込むほどでした。退院後に千葉リハに通う時も電車の移動がつらかったです。易疲労が解消するまでに半年近くかかりました。見た目は休日のサラリーマンですね。でも実際はグッタリしながらリハビリに
通う高次脳障碍者です。
つまり
すっごい怒って怖そうな人なんだけど、めちゃくちゃ疲れやすい。疲れるとさらに状況が悪化する。疲れすぎると疲れていることすら分からなくなります。
ついにはバターン!と突然電池が切れるような危険な状態になります。だからハートマークをつけているってわけです。
ハートマークを見かけたら座らせてくれたらうれしい。助かります。そんな状態なんです。ハチャメチャですよね?わけがわからないですよね?そうなんですよ。それが高次脳機能障害なんです。ちなみに全員がじゃないですよ?私を含めた一部がです。人によって違いますから。
見た目は普通なんです。黙っておとなしく座っているだけならね…。普通の人には理解が難しいですよね。仕方がないです。こんな人なかなかお目にかかれませんし。
そこが辛いです…。
なりたくてなったんじゃないんです…。
ある日、朝起きたら、こうなっていたんです。前日まで普通の人だったのに…(涙)
きっと多くの人がそうだと思います。事故で…病気で…ある日突然なっちゃったんです。高次脳機能障害に。