気が散って集中できないのはなぜ?どうすればよかったのか考える

気が散って集中できないのはなぜ?どうすればよかったのか考える

私には注意障害があります。
集中しすぎてしまう「過集中」というものです。
でももう一つの注意障害もあります。
それは「ちょっとしたことで気が散ってしまう」タイプの注意障害です。
二つをまとめるとこうなります。
【とんでもなく集中力があるのに、ちょっとしたことで集中力が途切れてしまう。】
意味不明ですね。この意味不明な脳機能のアンバランスさが私の高次脳機能障害の特性の一つなのです。
具体的にどういうことなのかを説明します。

注意障害の不思議。集中しすぎるのに集中できない

私の注意障害の経験談を一つ上げましょう。
ある日、私は仕事をしていました。障害を負う前だったら数分で完了する仕事でした。
しかしこの仕事は6時間以上使っても終わりませんでした。なぜでしょうか?
直接の原因は記憶障害があるからです。作業中に作業している内容を忘れてしまうため、最初からやりなおしになるからです。たった数分の簡単な仕事すら出来ない状況でした。
私の記憶障害は記憶した情報を正確に脳から取り出せない障害です。
情報を脳の引き出しに正しくしまえるのですが、、情報を引き出しから取り出す際に間違えてしまうタイプの記憶障害です。
なぜ間違るのか?インフルエンザ脳症で脳が腫れ上がって血流が悪くなり神経の回線が切れてしまったからです。
脳の回線は時間とともに復旧しますが、復旧作業中は正しく回線が使えないようです。電話が混線しているイメージですかね。正しく記憶を引き出せないじょうきょうだったのです。
するとどうなるか。
これから行おうとする行動と実際に行う行動にずれが生じます。例えると、右に行こうと考えているのに左に移動してしまう現象が起こるのです。
人から見たら「右に行くんでしょ?なぜ左行くのよ!」となります。やるはずの事をやれない。やらない。逆のことをしている。これって「注意力が無い」とか、「集中力がない」なんて表現されないですかね?
すべきことができていないわけですからね。そのように評価されても仕方がないですよね。周囲は高次脳機能障害の実態なんて知らないのですから。
で、問題なのはこの現象。どういうときに発生するのかと言うと疲れているとき、気持ちが緩んだときです。
注意力って有限です。ずーっと注意を持続できる人ってそもそもいないです。休憩をはさんだ方が注意力が上がったりしませんか? 
私も同じです。休憩をはさんだ方が注意力が上がります。でもなかなか休憩が取れない。
なぜかというと、休憩を取るのを忘れてしまうからなです。記憶障害だから忘れるのではなくて「物事に集中しすぎて休憩を取るのを忘れてしまう。」そんな状態なんですよね。
つまり「過集中」を起こしてしまうのです。その結果「集中力が落ちる」わけです。
どうです?私は物凄く集中しているつもりなんですよ。体力を使いまくって。でもそうすると脳がどんどん疲労します。その結果、集中力がどんどん低下する。すると注意力が落ちる。そして記憶の取り出しすらまともに出来なくなるんですよね。
「忘れないようにしなくちゃ!」って滅茶苦茶集中するんですよ。これがすべて仇になるのです。

高次脳機能障害の集中力低下どうすればいい?

私のような集中し過ぎてで集中力が無くなるという状態を抜け出すには…どうすれば井でしょうか?
こんな感じにするといいような気がしています。

同時に複数の事はしない

高次脳機能障害はマルチタスク障害とも言われるようです。同時に複数の処理をこなせないんですよ。
例えば

  • 会話をしながらメモを取る
  • 計算をしながら文章を書く
  • 子供の様子を見ながら料理をする
  • テレビを見ながらスマホをいじる

こういうのは注意障害があるととても難しいです。
料理で火を使うシーンを想像してみてください。ちょっとキッチンからリビングへ部屋を移動したとします。お皿やお箸を用意するために。
普通の人はコンロの火が付いているのをぼ得ています。だから用事が済んだらすぐにコンロの様子を確認するでしょう。
でも注意障害があるとこれができません。
お箸をもってリビングに行ったら、ガスコンロの火が着いていることは忘れてしまいます。目の前の光景が変わってしまう事で、注意が別の方向に向いてしまうのです。テレビで面白いシーンが流れたら…ずーっとテレビを見続けることでしょう。
このように同時に一つの事しかできないのです。二つ目を実施すると一つ目の作業内容はすべて忘れてしまいます。というかそれまで何をしていたのかを忘れてしまうのです。だからマルチタスク障害なんですよね。
そもそも同時に複数の事はできないのです。無理にやらせようとすると。強いストレスがかかります。負のイメージが脳内でグルグルと駆け巡り、感情失禁へと進むのではないかと思います。
怒り狂うかもしれないし、泣き叫ぶかもしれない。大笑いするかも知れない。何が起こるかは障害特性次第です。
高次脳機能障害の度合いが酷い場合は、絶対に一度に複数の作業をやらせないでください。まず本人が地獄を見ます。次に周囲も地獄を見ます。これ、本当に辛いですよ。辛かったですよ。

必ず環境調整を意識しよう

注意力って有限です。使うと物凄い勢いで減っていくのがわかります。注意力が空になるとミスが多発します。
「仕事をし過ぎて疲れて頭がボーっとする。そして仕事をミスしてしまう。」こう表現するとわかりやすいかな?
そうなんですよね。注意障害が酷い時期って、一日中、仕事のやりすぎ状態なんですよ。
「ボーっとするな!シャキッとしろ!」
って思う人もいるかもしれませんが無駄です。どれだけ無意味な声掛けかは、少し想像すればわかるでしょ?こんな意味のない声掛けをするよりも大事なことがあります。集中力を少しでも上げるために。
それは【注意が持続し集中できるような環境を用意する。】ということです。
いかに環境調整をするかです。当事者が行うのはかなり難しい。というか無理です。
環境調整なんて「障害の自覚があり、脳機能の最上位にあたる遂行機能が働いている状態」じゃないと出来ませんよ。無理無理。出来たら障害はほぼクリアです。普通の人に等しいです。っていうか障害がっても普通に暮らせる人ですね。車の運転だって出来ます。リハビリのために病院に通う必要もありません。
そのぐらい高度な技です。環境を用意するのは。だからこれは周囲の人がフォローするひつようがあります。
「え?そんなことまで?私は気にならないけれどなぁ」というレベルのフォローが必要だったりもするでしょう。そこは当事者の様子を観察してみてください。
「本人が希望を伝えればいいのでは?」って考えるのもNGです。そもそも本人はなぜ自分が苦しんでいるのかが分からないのですから。というか苦しんでいる自覚もなく苦しんでいますよ。
例えれば、お尻に火が着いて燃えている緊急事態なのに「今日は暑いなぁ」なんて呆けている状態ですかねぇ。注意障害ってそのレベルですから!
普通ではあり得ないでしょう?ありえないんですよ。あり得ないことが起こる。だから障害なんです!
環境調整は本人ではなく周囲の人が行うようにしてください。ぜひ!ぜひ!

疲れて集中できないのにすぐに疲れる

これ、本当に悩ましい障害ですよ。自分としては注意力を上げるために集中するんですよ。でも集中すると疲れるんですよ。すごい勢いで疲れるんです。そうすると集中できない。
だから、より一層集中しようとするんです。「集中できないのだからもっと集中しよう!」ってなるのは当たり前なんですよ。でも集中しようとするほどに集中力は低下するんです。地獄。
どうすればいいのかと言うと「もっと集中しなくちゃ!」となった時は休憩をはさむのが鉄則だと思います。絶対これ!休みましょう!一息つきましょう。お茶でも飲みましょう
…と言いたいのです。が、そうもいかないのが高次脳機能障害の悲しい所なんですよね。
そもそも休憩するのを忘れる。疲れているのに付けないほど集中する。また「ここで作業を止めたら、すべてを忘れてしまう!」という恐怖心。
休憩一つ取るだけでも、これだけの障壁を乗り越えないとなりません。でも超えられないのです。様々な要因がありすぎて。
すると疲れるんですよね。どんどん集中力はなくなります。疲れて集中力はなくなるから、もっと頑張ってさらに疲れる。
結果は「集中せず、結果が出ていないのに、スグに疲れてしまう。」となります。酷いもんですよ。
本人だけが疲弊しているのです。でも結果は出せていない。

注意力の障害はどうやって乗り切ればいいのだろうか

【いきなり病気をする前のような集中力はスグには取り戻せません!】
↑↑↑
これを本人が肝に銘じる!高次脳機能障害になったら絶対これを心がけたほうが良いと思う。
でも本人がこの境地に達するまでは何年も日数が必要です。なぜかというと「昔の自分をあきらめきれない」からなんですよ。だから障害で注意力が落ちている現実を、周囲が伝えなければなりません。
まずは、理論歴でもいいから実感が無くても良いから、とにかく「注意力が落ちたことを伝える」そこが障害を乗り切るための原点となります。障害を自覚する日がやってくるのを信じて待つしかありません。
とにかく自覚をしてもらう。その次に課題に取り組んでみる。お散歩やお使いから始まって、家事の手伝い、子供の遊び相手。このような日常を後れるように訓練する。
トランプや将棋なども良いと思います。子供とプレシテで遊ぶのも良いと思います。集中力が無ければできませんから。
とにかく何でもいいのでやれることを見つけて、集中できる時間を少しずつ延ばしていくのです。

本人にやる気が無かったらどうすれば?

意欲って障害を乗り越えるうえでとても大事だと思います。
本人に「障害を乗り越えてやるぞ!」という意思があれば、協力的にしろ、非協力的にしろ、何かしら行います。行動のすべては脳の刺激になるのではないかな?と思います。
問題は「何もする気が起きない」という場合です。一日中ずーっと寝てばかり。起きても何もしない。ぼんやり。
私もこんな時期がありました。活動のエネルギーが枯渇しているんですよね。高次脳機能を正常に働かせるためには、活動のエネルギーが必須なんですよね。車のガソリンと同じなんです。
私の場合はひたすら本を読んでいました。高次脳機能障害に関する本です。ナンプレもしましたね。娯楽系は全くしなかったです。完全に興味を失っていました。
病気をする直前までは、ネットで知り合った仲間たちと毎晩遊んだり、子供とプレステを取り合ったり、週末は必ず家族でお出かけしていました。それらのすべてに興味を失っていました。
何もしたいと思わないのです。遊びたいとも思わない。
もし家族がこうなってしまったときどうすればいいのでしょうか。私はこの時「無力感」を感じていました。これがやる気が起きない原因の一つだったのかもしれません。
その無力感を打破するきっかけになったのが「簡単なお使い」でした。イオンまで歩いていって牛乳を1本買ってくる。1日一回実施する私の役割です。この役割以外はひたすらごろごろしているだけです。でも夕方にはお使いに行きました。
イオンへのお使いが私の障害克服の第一歩だったのかもしれません。
お使いもまた脳機能を使いまくります。歩いている最中に脳疲労を起こすほどに疲れましたよ。グッタリして途中の公園で休憩をはさみながら買い物をしましたから。

集中力をあげるために必要な行動は何?

私の経験をまとめると、気が散って集中出来ないのは、注意力の障害があるからです。注意力の障害には、集中しすぎるパターンと、集中できないパターンがあります。
気が散って集中できないのは、

  • やるべきことを忘れてしまうからそう見えてしまう
  • 一度に一つの事しかできないから
  • 注意力を維持するエネルギーがすぐに枯渇するから
  • 本人の意志とは逆に周囲からは集中していないように見えてしまうから

こういう事なんだろうなと思います。私はそうでした。
本人としては集中しまくった挙句に「集中しろ!」と指摘されるのは甚だ心外なんです。
確かに結果が伴っていないわけなので「集中していない」と、評価されるのは理屈ではわかります。でも感情では納得できないんですよ。無理やり感情を引っ込めるしかないのは強いストレスです。このストレスは脳に悪いですよ。
脳に悪い影響が続くとキレれやすくなりますね。些細な事でブチ切れるようになるのです。
周囲からすれば、スグに切れる厄介者となります。距離を置かれて当然です。待つのは孤立です。悲しいですね。独りぼっちになった障碍者はどうすればいいのでしょうか。
「自業自得」という声もあるかもしれませんが心して欲しいのは、「いつあなたがこの状況になっても不思議ではない」んですよ。高次脳機能障害は対岸の火事ではないです。
事故や病気であっという間にあっという間になってしまいますよ。
「今日おやすみなさい。を普通に言えていた人が、、明日の朝に目が覚めたら障碍者になっている。」
ありえますよ。私はこのパターンで障害者となりました。
もし身近な人が注意障害になったら。集中力が無くなったら。スグに行動を促すのではなくて、まずはエネルギーの回復を待ってください。
自発的に行動をし始めたら励ましてあげてください。
失敗して当然です。絶対になじらない。文句を言わない。非難しない。絶対です!
失敗して当たり前です。ひたすら励ます。褒める。失敗しても褒める。とにかく褒めぬく。
集中力が切れているようだったら休憩を促す。疲れる前に休憩を促す。
感情が爆発したらそばを離れる。一人にしておく。
高次脳機能障害は認知症ではありません。
病気をした日が最悪の日です。そこからは改善していくのみです。改善のペースは人によって様々です。
でも改善します。脳は回復するのです。
気が散って集中できない時期はあります。でも誰もが通る道だと思います。
注意の集中と分散が以前のように無意識で出来るようになる日がやってくると信じましょう。
注意の集中と分散が全くダメダメで注意障害と診断された私は、今では普通に戻りましたよ。
大丈夫。大丈夫。大丈夫です。焦らないで!