インフルエンザ脳症の後遺症…入院二日目に出ていた障害の兆候|1月16日

インフルエンザ脳症の後遺症…入院二日目に出ていた障害の兆候|1月16日

2019年1月16日 インフルエンザ脳症で入院後、初めての夜を過ごしました。
目を覚ました時の雰囲気はなんとなく覚えています。部屋の中は「しーん」としています。個室なので私一人しかいません。
そうそう。「コッコッコッ・・・」という心拍センサーの音がしていました。もしかすると廊下から朝食の準備をする物音も少しは聞こえたかな?
朝7時になると看護師さんがやってきます。体温と血圧と血糖値を測りました。
何か会話をしたでしょうか…。たぶんこの時の私は会話はほぼ出来ていないはずです。返事はするかもしれません。ただぼんやりと空中を見ている。そんな感じだったと思います。
満足な受け答えはできないのですが頭の中ではいろいろ考えていました。
「なぜここにいるんだろう?」
「寂しい」
「これからどうなるんだろう」
「記録を残さなくちゃ」
必死に自分がどういう状況なのかを思い起こそうとしたはずです。なぜ自分が知らないベッドで寝ているのか、ここがどこなのか、今がいつなのか、これからどうなるのか理解できず不安でいっぱいでした。

医師達の巡回!最初の試練の朝が始まる

大学病院教授と研修生の朝の巡回
私が入院した大学病院では毎朝8:00になると、教授1名・主治医1名・研修生2名(?)による巡回が行われます。明日を担う医師の卵の現場教育というわけですね。
初めて目にした時「ぞろぞろと大勢来たなぁ」という印象を受けました。
そして私が誰で、どんな仕事をしていて、どんな症状なのかが、教授の口から淡々と説明されました。
「この方はエンジニアです。仕事に戻らなければなりません」
教授の口から出た、このフレーズだけがなぜか今でも私の記憶にはっきりと残っています。記憶は感情のラベルを付けることで定着しやすくなるそうです。教授の言葉に私の感情が刺激されたのです。その感情は
「屈辱」
…さらし者…。私は今さらし者にされている。ベッドの上でぼんやりと前を見ているだけの私。後から聞いた話では目の焦点もあっていないような状況だったそうです。でもしっかりとこの時の感情は覚えています。
「私は今さらし者にされている。」
「屈辱だ」
「やめてくれ」
そういう感情が強くわいてくるのですが行動に移せませんでした。ただぼんやりと前を向いているだけでした。研修生と目が合うと「ニッコリ」とされたと思います。研修生には悪い印象はありません。でもこの儀式はね…。
「仕事だろうけど、私をさらし者にするのはやめてくれ…。」
そう思っていました。記憶障害真っ只中にもかかわらず、このシーンは頭にこびりついています。

脳が腫れているのに…人間の回復力は凄まじい

ノートの記録を読み返すと、入院した当日は殆ど文字が書けていません。
でも次の日の16日は結構、書き込みをしています。時間単位で血圧測定や点滴の種類などいろいろ書いています。
驚いたのは、妻が帰った後にスマホを探しまくっていることです。体が自由に動かせる状態なんですね。
実はスマホは妻が家に持ち帰っていました。しかも私に「携帯(ガラケー)とスマホは持って帰るからね」としっかりお断りをして、私から了解を取っていたそうです。すっかり忘れていました。まさに記憶障害!
搬送された前日は、ベッドの上でまったりしているだけだったそうです。(おっとりとしていて、穏やかな患者さんと言われていたそうです。)
それが次の日はスマホを探して部屋の中をうろうろと探し回れるほどに回復するのですから。人間って一気に回復するんですね。

記憶力ゼロ。インフルエンザ脳症発症2日目の状態


MRIでわかったのですが、この頃の私は脳全体が腫れ上がっていたそうです。結構危険な状態だと思います。
とりあえず、記憶力はほぼありません。本当に右から左。ざるで水をすくうような状況です。
だから部屋から外に出れません。危ないです。自分も帰れなくなるような予感がしていたので出ようとは思いませんでした。ベッドから降りるとナースステーションに連絡が行く装置が床に設置してあります。
手首には部屋番号を書いたブレスレットが装着されていました。何回も確認するのですが「506」という部屋番号が覚えらるようになったのは、だいぶ日数がたってからです。
記録ノートにはスマホが行方不明になったことを書いています。そして妻が持って帰ったのだと結論が書いてあります。
ところが1時間後、別のページに再度同じ記録を残しています「スマホが無くなった!」と。まるでたった今知った驚きの事実のように!
スマホは妻が持ち帰ったという事実を忘れているのです。1時間前の記憶が消えてなくなっているのです。
そして部屋中をひっくり返してスマホを探していました。諦めるまで30分です。
そしてスマホは「妻が持ち帰ったのだろう」という結論となりました。
後日妻に確認したところ、「スマホと携帯を持って帰るよって言ったよ?わかったって返事したでしょ?」だそうです。
そんな事実は記憶にございません…うううう…。