高次脳機能障害の作話|実際に経験したけどキツイねこれ

高次脳機能障害の作話|実際に経験したけどキツイねこれ

高次脳機能障害の症状の一つに「作話」というものがあります。
作話とは現実には起きていないことを、本当に起きた出来事のようにとらえてしまうことです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%9C%E8%A9%B1
似たように見えるものに「嘘」があります。例えば「今朝は納豆ごはんを食べました」という会話をしたとします。
本当は納豆ではなくてパンを食べており、それなのにあえて「納豆」と言っている自覚があるのなら「嘘」です。
しかし作話は違います。
本当は納豆ではなくパンを食べました。ここまでは同じ。だけど「本気で納豆を食べたと信じ込んでいる。」こう信じ込んでしまったら作話です。
違いは本気でそういう事実があったと信じているかどうかです。自分で自分をだましているというか…だましてはいませんが、起きていない事実を事実と本気で信じてしまう状態ですね。
私は、この作話の症状がありました。インフルエンザ脳症で一時的な記憶を司る脳の器官。海馬に傷が付いてしまっため、記憶のコントロールが下手になってしまったからです。
では実際にどんな作話を経験したのか。書いてみたいと思います。メンタル削られまくりな経験でした。

自分で言っておいて自分で驚いた作話達

ちなみに今はインフルエンザ脳症になってから1年と7か月が経過しています。
現時点で作話はあるのか?というと「特にないかなぁ…」そんな印象です。
私が思うに作話は記憶障害と注意障害が酷いと起こるんじゃないのかなぁ?って感じています。
障害が酷かった頃はこんな事を経験しましたよ。

誰も文句を言っていないのに文句を言われたと信じこむ

いきなり危険な体験談が出てきましたが…。実際にあった事なのでそのまま正直に書きます。
障害を負って3~4か月ぐらいの時期だったと思います。
高次脳機能障害になる前の仕事を再開したのはいいけれど、思うようにいかず精神が最高にボロボロになっていた頃ですね。
この頃ってメモリーノートをフルに活用しながらなんとか仕事を続けていた頃です。超ギリギリの精神状態でした。
精神がとても不安定。毎朝、仕事用のPCの前に座ると吐き気に襲われるような状況。さらに夕方になるとボロボロ泣いているような状況。本当に悲惨な毎日でした。
それでも元のように仕事をバリバリに出来るようになりたくて、歯を食いしばるような感じでひたすら耐えていました。
そんなある日なんですよね。午前中の出来事だったと思います。
「障害を負ったお前はもう使いモノにならない。」
こんな感じで、一緒に仕事をしていた仲間から強く非難をされたんですよ(怒)
こんな事を電話で言われたんですよね。そりゃもう私、ブチ切れまくりです。
障害を負って3か月。思うようにいかない自分が嫌でたまらなくて発狂状態になりながらも、コツコツ・コツコツと少しずつ積み上げ。ようやく光が見えてきたかもしれない。だから頑張ろう。まだまだできるよ。もう少しだけやってみよう…。
夕方になれば「昔の自分は良かった。何でもできた。あの頃はよかった。」と、綱渡りのような限界ギリギリの状況の中で、落ち込んだり挑戦したりする毎日でした。
それがですよ…障碍者になったからといって、「お前は使い物にならない」ですよ。
確かに記憶障害の影響で、あっという間に忘れてしまうことがありました。電話が本当に苦手です(もともと苦手だったのがさらに苦手に)。1歩進んでは3歩下がるような状況にパニックになったりもしました。
そんなどうしようもない状態になっていたけれど、それでも何とか元の職場に戻ろうと、本気で死ぬかもしれないような状態にまで自分を追い込んで頑張り続けて…。それが
「使い物にならない。」
って切り捨てられたのですから。
この日は荒れました。1日中。自暴自棄になりました。「もうどうでもいい。元の世界に戻れなくてもいい。」そう妻にも言いました。
人生最悪の日の一つに挙げられますね。

自分自身が怖くなる瞬間が突然やってきた

…作話でした……。
心がすさんで荒れ狂った1日。その1日を閉めるべくメモリーノートに現況を記録しようとしたんです。
で、その時、朝の電話の記録を確認したんです。そしたら…
「…あれ?」
「なんで今日、荒んでいたんだっけ?」
「たしか午前中の電話だったよな…」
「これだ、ここに電話の内容が書いてある。」
「…あれ?」
「業務連絡しか書いてないぞ。」
「???」
「もしかして作話?」
この時は本当にショックでした。メモリーノートには業務連絡の記録しかないのです。
私の記憶では「こんなにひどい事を言われた!」とメモリーノートに書いてあるはずなんですよ。ところが、そんな情報1mmもありません。書いてあるのはただの事務処理だけ。
「ええええええええええええええ」
私はただの事務処理の連絡の記憶を、「お前はダメな奴だ」という記憶にすり替えて再生していたようです。
この事実に気付いたときは本当に怖かったです。
「ダメだろう。こんなことがあったら」

作話の症状はその後どうなった?

作話という症状があるのは知っていました。たしか「ただいまコウジチュウ!」っていう漫画で紹介されていましたから。
だから「ぜったい作話なんてしないぞ。気を付けよう!」そう考えていました。
でも作話をしました。そしてヤサグレました。知識があっても、気を付けていてもダメなんですね。
「これが障害ってやつなんだなぁ」って、恐ろしくなりましたね。
でも大きな作話はこれ以降経験していません。まぁ、小さい作話というか勘違いはこの後も何回か経験しますが。大したことはありません。
つじつまが合わない事や「常識的に考えてありえないだろ。」って感じたらメモを読み返すようにしたおかげです。
今ではメモリーノートは取っていません。記憶力がしっかりして作話の心配がないからです。
もしあったとしても、経験しているのでまぁ大丈夫です。
障害で一度痛い目に合うと、経験値がもっさりと増えるようです。
高次脳機能障害になると今まで生きてきた中で1度も体験したことがない状況を経験します。
ほんと、訳の分からない道の世界がやってきます。全然つじつまが合わなかったりします。
それでも、だんだんと慣れてくるんですよね。きっと障害が軽くなってきているんだろうなって思います。
少しずつ。少しずつ。脳は回復するんですね。