「公共交通機関を使用している障害者が理解できない。なぜタクシーを使わない?」への答え。

「公共交通機関を使用している障害者が理解できない。なぜタクシーを使わない?」への答え。

いきなり刺激的な記事タイトルですね。このタイトルはツイッターの中で見かけたツイートです。
このツイートをした方は「障碍者は支給される手当てをまっとうな事(通院、リハビリなど)に使用せず、全部懐にしまっていてずるい!」そう主張されていました。
さらには「障害者は外出する機会が少ないのだから、手当は余っているはず。」とも主張していました。
「なるほど」と思います。確かに普通の方々から見たら「障害者=何らかの手当をもらう」という考え方があるのかもしれません。「障害をケアするためにもらっている手当なら通院に使え!」になるのも良くわかります。
私は高次脳機能障害なので精神障碍者の分類になります。持っている手帳は3級の精神障碍者保健福祉手帳です。
なので精神障碍者保健福祉手帳を持っている私の場合の事情を書いてみたいと思いました。
私自身、タクシーは使わず電車で1時間30分かけて千葉リハに通院していましたしね。
「お前も障碍者手当を懐に入れていたのか!」
ツイート主なら、きっとそう思われることでしょう。ものすごい誤解ですけれどね。
ここでは3級の精神障碍者保健福祉手帳を持っている私の現実を紹介します。

そもそも障碍者手当なんて出ていませんよ

いきなり実も蓋もない事を書いてしまいました。
「障害者=手当がでる」と考えている人っていると思います。実は私もその一人でした。
「高次脳機能障害になったけれど、手当は幾ら支給されるんだろう?」なんて考えていました。けれども実際は支給なんてされません。ゼロ円ですよ!
ただし医療費が1割負担で済みます。とはいっても障害に関する医療費のみです。私の場合は月当たりの上限額が7500円だったと思います。
どういうことかというと、週に一度1万円かかる高次脳のリハビリがあるとします。月に4回通えば4万円ですよね?
でも「精神障碍者保健福祉手帳」を持っていると「月当たりの上限枠内以上の支払いはしなくて済みますよ。だから今月の支払いは7500円まで。それ以上は0円の請求ですよ。」という仕組みになっているのです。
ちなみに糖尿の病院にもかかっていますが、こちらは高次脳には関係ないので普通に3割負担です。
私が活用できている手当(…というか制度)はこのくらいですね。
通院は半年に一回の診察だけですし。逆にデメリットが大きくなっていると感じています。

障害者が公共機関を使うのは迷惑行為なのか?

高次脳機能障害のある方は引きこもりがちになるそうです。そう高次脳機能センターのセンター長がおっしゃっていました。
とても大きな問題です。脳に障害があると矛盾した行動をとりがち。失敗を繰り返します。それでも周囲に理解があれば乗り切れるかもしれませんが、心が折れてしまう方もいて当たり前だと思います。
そもそも電車やバスに乗る事すら難しいんですよね。車いすなどは想像しやすいと思います。
高次脳の場合はどうなるかというと、例えば目で時刻表や番線を確認するとします。
そして「次は10:00の電車が6番線からだな」って理解したとしますよね。普通の人なら6番線のホームに移動して10時の電車が来るのを待つじゃないですか。
しかし私の場合は、とりあえず6番線に移動しようとしますよね。でも途中で「あれ?何番線だったかな?」ってなるんですよ。
いや、疑問に思えるのならまだいいです。確認すれば正解にたどり着けますから。
記憶と注意に障害があると「思い出した。1番線だった!」になるんですよ。で、1番線で時刻表や電光掲示板を確認して「あれ?なんか違うぞ??」「次の電車は10:30になっている…なんで?」ってなるんですよ。
初めてこのブログを目にして、この記事から入ってこられた方は、「ふざけているのか?」って思うかもしれませんが、悲しいかな、これが高次脳機能障害である私の現実でしたよ。
一事が万事この調子。とにかく失敗しまくり。いつ心が折れて二次障害を起こしてもおかしくはない。引きこもりになって当たり前です。行動するたびに失敗して迷惑をかけますから。
でもねぇ…周りに迷惑は一切かけていないんですよ。ここでの周りとは駅にいる赤の他人達をさしますよ?
多くの高次脳の方々って基本は普通の方々です。事故や病気で一部の能力が欠けてしまっているだけ。
時々怒りやすい人もいますけどレアケースでしょう。それをさも全員が該当するかのようにレッテル貼りをして「精神障害者は公共機関を使用することで周りに迷惑をかけている」という主張は、到底許せるものではないですね。無知による偏見からくる差別です。
「女はこうだからダメダ!」「男はこうだからダメダ!」といってレッテル張りをする人と同じですね。「事情を知りもしないのに!一方的に決めつけるな!」と、腹が立ちませんか?
話を戻しましょう。
私は失敗を繰り返しながらも、自分一人で千葉リハに通えるように努力しました。毎度毎度失敗しましたよ。長時間の移動で乗り継ぎが大変複雑でしたし。
失敗はするけれど、周囲の人には全く迷惑をかけていません。数回、遅刻したので千葉リハには迷惑がかかりましたが。この方が主張しているのはそういう類の迷惑ではないですよね?
さて?私が駅を利用するのは迷惑行為なんですかねぇ

障碍者は迷惑をかけないようにタクシーを利用せよ!を数値化してみた

開いた口が塞がらないとはまさにこの事!
どれだけ費用が掛かると思っているのでしょうか?…そうでした。その費用は国や自治体からがっぽり入る前提でしたね。この方の主張では。
ネットで調べてみたら、月当たり27,350円支給される条件というものを見つけました。
千葉県のWEBサイトです。障害のある人への手当という項目ですね。

https://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/service/teate.html

私と比べたらかなり重度な障害を持つ方への手当ですね。だから私には支給されません。
私の場合はリハビリが週1回、作業療法が週1回、診察が月1回だったかなぁ?仮に月に4週だとして計算するとどのくらい費用が掛かったんだろう。
とりあえず交通費は
一回通ったときの交通費=片道639円*往復*2人(付き添い)=2556円
移動回数=作業療法が月に4回+診察1回=5回
月当たりの交通費=2556円*5回=12,780円
医療費=7500円/月+交通費12780円=20,280円
電車で移動した場合の月当たりの費用合計=20,280円
私は高次脳のリハビリのために月当たり約2万円の費用が必要だったようです。交通費コミです。
障碍者は存在が迷惑だからタクシーを利用せよとのことなので、もし交通費をタクシーに置き換えたらも計算してみましょう。
タクシーの料金サイトで調べたら片道1万円だったので、それで計算すると
一回通ったときの交通費=片道1万円*2=2万円
月当たりの交通費=2万円*5回=10万円
医療費=7500円/月+交通費10万円=107,500円
タクシーで移動した場合の月当たりの費用合計=107,500円
…うわぁ。です。これ毎月ですからね。障害で収入が激減している状態ですからね。そこに毎月通院で11万円ですか。あっという間に破産ですね。高次脳機能障害って完治まで(完治しないのですが)通院期間はとても長いですよ。年単位です。

思い込みではなく数字で判断すると見えてくる現実

ツイートの内容は「精神障碍者は障碍者手当が出ているのだから、周りに迷惑が掛からないように公共機関を使うな。タクシーを利用せよ。」でした。
主張の通りに従うと月当たり11万円の医療費+交通費がかかります。その間は全く収入が無い状態です。貯金を切り崩しています。障害なので期間も長めです。
「障碍者手当をたっぷりもらっているだろう?」
出ません。
障害への医療費が上限7500円の制度はとても助かっています。ありがたいです。でもそれを考慮してもタクシーを使うと月当たり11万円になります。
これが「なんでタクシーを使わないの?」の答えです。