インフルエンザ脳症の奇行|現実はどうだったのか当事者が伝えます

インフルエンザ脳症の奇行|現実はどうだったのか当事者が伝えます

インフルエンザ脳症について検索してたら「奇行」の記事があったので、当事者である私が、私自身に起きた現実を書いてみたいと思います。
ちなみに、私が見かけた奇行の記事はこちらです。
↓↓↓
https://finders.me/articles.php?id=662
インフルエンザ脳症の奇行と言っても、人によって全く違うと思います。だから私の事例が他の人にそっくり当てはまるなんて考えてはいません。あくまでも一つの事例として読んでくださいね。

インフルエンザ脳症を発生した時の私の奇行

次にあげるものは急性期の私の奇行です。

朝っぱらから職場へ何度も電話

インフルエンザ脳症発症当日は、仕事先に出かける予定でした。でも熱があっていけないから「お休みします」って電話をしました。何度もしました。なぜ何度もしたのかというと、電話をしたのを忘れてしまうからです。
「電話をしなければ」という意識。というかこだわりですかね。そのこだわりに支配されてしまい、電話をかけた事実が記憶から消えてしまって、何度も繰り返し電話をしました。
これが最初の奇行ですね。【同じことを繰り返し何度もする】ってやつです。

当日の出来事は何も覚えていない

発症当日の出来事はほとんど覚えていません。一応うっすらと「救急車で運ばれている」というのと「救急車から自力で降りた」というのは覚えています。そのくらいです。
膨大な量の検査をしたそうです。MRIで脳の画像をとったり(寒い怖い)、髄液検査をしたり(痛い怖い!)したそうですが、何一つ覚えていません。
幸いにもおとなしく検査を受けていたようです。

同じことを何度も繰り返して人に聞く

一度気になると、ずーーーーと気になり続けるようです。病院への付き添いに子供も付いてきたのですが「今日、学校はどうしたの?」って執拗に確認したそうです。
確認したことを確認した直後に忘れてしまうのです。でも「平日だから学校はどうしたんだろう?」という考えが解決しないため、心配してなんども「学校はどうしたの?」って聞いていたのだと思います。
聞いたことは数秒で忘れます。残るのは「平日なのに学校はどうしたのだろう?」という気持ちだけ。

恐怖心がなくなる

私は狭い所が大の苦手です。MRIなんてもってのほかですよ。あんな狭い筒に頭から入り込むんですよ。怖い怖い怖い!
でも発症当時は全く恐怖心がありませんでした。脳が腫れ上がった影響で感覚がマヒしていたんでしょうねぇ…。まるで別人ですよ。
恐怖心が蘇ったのは入院三週目だったかな?

痛みを感じない

背骨に針を刺して髄液をとろうとも、糖尿の注射をおなかに打ちまくろうとも、血液検査でちをぬきまくろうとも、1日3回の点滴(ステロイドパルス)を長期間実施して(3クールやったかしら?)針を刺すところがなくなっても、痛みを感じていませんでした。
たぶん痛みを感じなかった期間は発症後2週間程度だったと思います。
ある日突然「痛い!」となり「今まで痛くなかったぞ!!」って驚きましたよ。
別途治療中だった手首と奥歯も痛み始めて散々な目にあいました。

匂いを感じない

脳に良いからとラベンダ、レモングラス、コーヒーを小袋に入れて匂いを嗅ぐようにしていました。妻が持ってきたんですよね。
匂いはしていませんでした。匂いを感じたのは痛みを感じた時と同じ頃かなぁ?イマイチ思い出せません。

五感を失っていることに気が付かない

匂いに気付いたときはそれはもう驚きました。
「今まで匂いがしていなかったんだ!」
痛みの時もそうです。
「今まで痛くなかったぞ!」
この二つはかなり私を驚かせましたよ。五感のうちの2つを失っていたわけですからねぇ。
もっと驚くのは
五感を二つも失っていることに全く気が付いていなかったんですよ。自分で自分にびっくりですよ。
これって注意障害ですよねぇ?恐ろしいです。

目の前からモノがなくなると見つけ出せなくなる

たった今まで目の前にあったものを、物陰に隠されると「あれ?ないぞ?」ってなるんですよ。
また入院中に付き添いの妻が少し部屋から出ると「あれ?いつ帰ったんだろ?」ってなるんですよ。
で、数分して妻が戻ってくると「あれ????」ってすごく驚くんです。
これって注意障害+記憶障害の影響なんでしょうねぇ。
見えなくなると見つけられなくなるのです。人も物も。

体は意外と元気で普通

ステロイドパルス中は昼も夜もずっと点滴をしていたので、部屋の外には出られませんでした。
ベッドの足元にはセンサーなどが設置してありましたが「今はインフルエンザ警報だから廊下に出ないほうが良いよ」といわれており、「なるほど!外は危険だ!」と認識していたんですよね。
だから一歩も外に出たいとは思いませんでした。面会禁止のためインフルエンザの人は入院病棟には入れないですけれどね…。
そのためか、ステロイドパルスが収まると「廊下に出て散歩しても良いよ」と言われるようになりました。グルグル散歩していましたね。入院病棟の廊下から外には絶対に出たいとは思いませんでした。
たぶんその辺りの性格が読まれていたのかもしれません。話では廊下での散歩は特別な許可だったそうですし。ぐるぐるとナースステーションの周りをまわっていましたよ。

身体は元気そうに見えるけれど予断を許さない状況

人間の身体って不思議ですよね。毎日1~2時間は散歩でグルグル廊下を歩いていたんですよ。結構体が元に戻っているように思えますよね?
実はそうではなかったそうです。
そもそも脳が腫れ上がって認知症状態。【いつ急変するかわからない状態】だったそうです。本来なら絶対安静だったのかもしれません。
しかし体は平気で健康っぽい。体力がある。廊下をずっと歩き続けられてしまう。
そうはいっても脳はダメージを負った状態(MRI画像では海馬に傷が写っていました)いつ意識がなくなるかわからない状態だったのかもしれません。
そのため入院期間は多めにとって1か月だったそうです。
入院期間中は毎日、病院がお休みの土日も欠かさずMRIを取り続けました。脳内での傷と出血(?)も気にしていたようです。

妙なこだわりを持って譲らない

高次脳になると「融通が利かなくなる」って言われるようですね。
この考え方には当初、否定的でした。だって私は、考え方の柔軟性に自信がありましたから。
しかし案の定、妻から言われるようになったんですよね「高次脳になったら融通が利かなくなった」って
「そんなはずはないだろう!?偏見だ」って反論しましたが、

  • 記憶障害で記憶が巻き戻る。
  • 記憶障害で最初に記憶した情報からアップデートできない。

この2点が私が「融通が利かない」と言われてしまう原因なのかな?そのように今は考えています。
本当の頑固と違うのは「怒りの感情が無い」という点ですね。
本当の頑固なら「それはちがう」と指摘されたら怒るでしょう。
私は「そうなんだ!」と素直に受けとれますから。

突然泣き出す

入院中は毎日のように泣いていたと思います。感情失禁ですね。脳の障害の影響です。これがインフルエンザ脳症の症状ってやつになるのでしょう。
なぜ泣いていたのかというと、「大病を患い、今まで通りの生活が送れなくなってしまった現状を悲観して」です。悲しいですよこれは。
電話でも泣いていましたね。悲しすぎて。悲しいという感情はやばいですね。もともと泣くなんてしたことが無かったのですが、本当にちょっとした刺激でボロボロと泣き始めてしまうんですよ。
これもある意味奇行なんでしょうね。
ちなみにネットでよく言われる「高い所から飛び降りる」といった類の奇行は一切ありませんでしたよ。

話すテンポが異常に遅くなる

私、気づいていなかったのですが、会話の店舗がとても遅かったのではなかろうか?って思います。
少なくとも行動のテンポはゆっくりでしたよ。
どのくらい遅いのかというと「イオンに置いてある子供向けのお名前シールの機械並」です。何のことなのかわからないと残念ですが…。
説明すると、かなり小さい子供向けの機械でして、お話をしてくれるのですが。そのペースがすごく遅い!あまりにもゆっくり過ぎて眠くなります。それと同じくらいに私の行動のペースはゆっくりだったと思います。

スグにぐったりして動けなくなる

これは奇行なのかな?とは思いますが、インフルエンザ脳症になった後の症状なので書きます。
とにかく疲れるんです。高次脳機能障害の易疲労ってやつのさらにパワーアップ版ですね。
動きが遅いうえにスグに疲れるんですよ。漫画なんて1ページ読んだら燃料切れになってグッタリです。
漫画は頭の中でセリフをよみますよね。あれが私の脳にとどめを刺すぐらいの威力があるらしいですね。あっというまに疲れ果ててグッタリしてしまうんですよね。恐ろしいものです。おかげで漫画の本が読めなくなりました。
入院前は漫画大好きで毎日週刊誌を買って読むほどでしたよ。でも結局、読めたのは「日々コウジ中」ぐらいですね。私と同じ働き盛りのご主人が高次脳機能障害になってしまった体験談漫画です。
今は漫画も平気で読めると思いますが、読もうという気が起きていません。妻が買った単行本が山のようにたまっています。

  • 弱虫ペダル
  • ヒカルの碁
  • 進撃の巨人
  • 働く細胞

そのうち読みたいと思いますが…なぜか読もうという気持ちが湧きません。あんなに漫画好きだったのに。障害で性格が変わってしまったのでしょうか?

少しの出来事で絶望的に不安がる

不安感がとても強いです。負の感情にとらわれやすくなっています。病気で打たれ弱くなったのかな。きっと感情失禁の影響もあるのかと思います。
入院中もちょっとしたことをきっかけにして絶望感に襲われたことがありました。そもそも脳に傷を負っている時点でかなりの状態ですが、さらに輪をかけた絶望でした。
それは癌が原因で脳症になったのかもしれない。という話を聞いてしまったからです。
入院中に聞いてしまったんですよね。私の脳症の原因を主治医から。
大学病院で「私の病気は本当は何か?」という会議が行われたそうです。一応インフルエンザ脳症という診断は出ていたのですが、他にも疑わしい病気があったそうなんです。それはこの二つ。

  • ヘルペス脳炎
  • 自己免疫性脳炎

ヘルペス脳炎と自己免疫性脳炎の症状はインフルエンザ脳症に似ているそうなんですよ。
そもそも大人の私がインフルエンザ脳症に罹るは大変珍しいので、他の病気の可能性もかんがえられていたんですよね。
で話を聞いたとき「ヘルペス脳炎はちがうだろうな」とも言われました。何か確証があったようです。
でも自己免疫性脳炎が怪しい。これの原因は体の中に何か異物ができてもおこる時があるそうです。
その話を聞いたとき私は癌を連想しました。
感情失禁で不安が暴走しやすい。それでなくても病気で入院中。脳がやられたのは知っている。精神が不安定な状態。そのときに「体の中に異物」ですからねぇ…。その瞬間に私は豹変したようです。とんでもないレベルで落ち込んだようです。
余りにも落ち込んでしまったため。主治医が全身CTで検査をして診断書を書いてくれました。「所見なし」と。
このぐらい極端に不安がる状態になっていました。

メモが書けない

私はメモ魔です。病前からメモを取る癖がありました。だから救急搬送された当日も病状をすべてメモに取ろうと考えていたんですよね。
でも、書けないんですよ。入院した当日のメモを読み返すと「うわ、こわい!」というレベルの仕上がりになっています。一言二言を振り絞るようにして書いてあるんです。まるでダイイングメッセージ。
まぁ、記憶が全く保てなくて、スグに疲れ果てて、心電図のセンサーを体に貼られていることにも気づけなくて、脊髄に注射されてもぼんやりしていた全く痛みを感じない。そんな状態でしたからねぇ。
メモを書こうとする強い執念はあったそうです。「鬼気迫るものがあった」と妻は言ってます。でも実際に書いたのは一言二言です。
「メモをとれ!」ってよく言いますけれど、メモを取るのってかなりの能力が必要なんですね。

突然前向きな考え方になる

私は入院中のすべてをノートに記録していました。メモ魔ですから。
今読み返すと突然に楽観的になったりしているんですよね。すごく楽しそうに入院中の記録を書いているんですよ。
状況をわかっていないのかな?って思うれべるです。
思うに突然何かの感情に支配されて超前向きになる瞬間があった。のかもしれません。
朝は確実に落ち込んでいました。でも昼間余裕ができると楽観的になったのかなぁ?なんて想像しています。なぜ楽しそうに記録を書く瞬間があったのか、自分でも全くわかりません。不思議すぎ。

現状を把握できず楽観視

こちらは入院中に退院後の自分がどうなるかについてです。
入院中の私はかなりヤバい状態でした。一応病棟内をお散歩しているような状態には回復していましたが「いつ急変するか…予断を許さない状態。」だったそうです。
毎日行う心理検査の点数は一般次以下。つまり脳に障害がある人レベル。そもそも最初の頃は点数化できないほど酷かったそうです。100人中100位の成績ってやつです。
そんな私でしたが「退院後はすぐに元のように仕事を再開する!」「車も運転する!」って息巻いていました。
退院さえできたら当たり前の日常が再びやってくるって信じていましたからねぇ。
やってきませんでしたが。
ちなみに2019年1月発症。今は2021年9月です。発症前の日常を取り戻せたかというと、未だに取り戻せていません。自分を励ましながら辛い毎日を送っています。

感情のコントロールが上手く行かない

入院中は感情のコントロールが全くできていなかったと思います。
スグに悲しくなるんですよ。ちょっとなにかがあるとシクシク泣いてばかりでした。
もともと悲観的な性格なのですが、その方向にリミッターがはずれてしまったかんじでした。
とにかく「もうだめだ」に襲われるんです。
私が入院していた病棟は脳神経内科です。廊下の窓や非常階段の出口には鍵がかかっています。絶対に明かないようになっています。
その理由がなんとなくわかる気がしました。
いつも病棟の窓から自宅の方向を眺めていました。
たった一枚の窓で隔てられた世界。すごく遠いものに感じていました。とんでもなく寂しかったですね。

すべての行動が緩慢

入院中は…いや発症後半年間は…動作が緩慢でした。本当にあり得ないくらい緩慢。喋るペースも遅い。歩く速度も遅い。マウスをクリックするペースも遅い。何もかも遅かったです。
わざとではないですよ?自分の中では全速力なんです。病前と同じ速度で行動しているつもりなんです。
でも違っていました。遅かった。
動作速度の遅さに気付いたのは「高次脳機能バランサー」という測定ソフトをしていた時です。
「あれ?なんでこんなにマウスクリックが遅いんだ?音に合わせてクリックする必要ないじゃない」ってある日突然気づいたのです。
その瞬間から行動速度が昔同様に速まりました。その瞬間段違いのスピードで行動できるようになったのです。
動作速度の遅さに自覚したから速くなったのかなぁ?なんて思います。

他に気を取られるとしていたことを忘れる

これも注意障害ってやつなんですかねぇ?
一つの事をしているときに、他の事に気を取られると、今までしていたことを忘れてしまうようになっていました。
今でもこの症状はあります。だいぶ落ち着いてはいますが。
一番ひどかったのは入院中なんでしょうねぇ。でも入院中は殆ど刺激のない状態ですからねぇ。
「たぶん妻が廊下に出て見えなくなると、帰ってしまったと誤解してしまう」というのも、このけっかなんだろうなって思います。
ただ、他に注意が移ると記憶が消えてしまうのは、退院後が散々でしたね。本当に辛かったです。
今でもありますが、対策しているため、さほど問題なくやっていけています。

インフルエンザ脳症の奇行とは何ぞや

今回の記事のテーマはインフルエンザ脳症の奇行でしたね。
ここに挙げたのは高次脳機能障害の症状ですが、それがそっくりそのままインフルエンザ脳症の奇行に繋がっているのだと思いますよ。
急性期の最初の最初のインフルエンザ脳症発症直後の奇行は

  • 記憶障害が原因の繰り返しの電話
  • 記憶障害が原因の子供への質問

この2点ですね。
奇行というと「わめいたり、さわいだり、暴れたり」に思えるかもしれませんが、そういうのはゼロです。まったくありませんでしたよ。
そういう奇行はあり得ないような気がします。
さらには「インフルエンザを悪化させて脳に影響が出て、突然奇声を上げて騒いだ挙句に窓から飛び降りる」なんてとんでもない話も見たことがありますが…
「それってどうなの?あるの???」
って思います。もしかして子供の症例なんでしょうかねぇ?
大人がインフルエンザ脳症に罹るのは超レアケースですしね。