遂行機能障害を実感|電車に乗れないシステムエンジニア

遂行機能障害を実感|電車に乗れないシステムエンジニア

「もう高次脳は治ったと思ったのに…私は本当にダメになったんだな。」
インフルエンザ脳症で精神障手帳持ちになった私。めげずに何度もチャレンジしては失敗しまくってきました。
そんな私が、かなり「ガクン」と来たエピソードがあります。
それは「一人で自宅から千葉リハまで行ってみるチャレンジ」に見事に失敗したことです。
もちろん前日の晩にたっぷりと時間をかけて綿密に電車の乗り換え計画を立てました。メモを取ったし完璧だと思っていました。何度も確認しました。失敗したくないですからね!
普通だったら、予定通りに目的地に到着できます。でも、それでも、私にはできませんでした。
「これが遂行機能障害なんだ」
と心から実感。自分の脳がいかにダメになったのかを理解しました。今日はそんなエピソードです。「遂行機能障害ってこうなんだ」がわかると思います。

明日は千葉リハだ!予定を立てよう

高次脳機能障害なのに一人で千葉リハまで行けると信じていました
私は3月(たぶん)から作業療法とグループリハビリのために週1程度のペースで千葉リハに通っています。
今は一人で移動していますが、最初の3か月ぐらいは妻の付き添いがありました。
自宅から千葉リハまでは電車で1時間半。最寄りの鎌取駅までは電車の乗り換えが2回あります。健康な人であれば造作もない道のりです。もともと仕事で日本中を周っていたので「たかがこのくらいの距離で付き添いなんて…」という不満もありました。
何回か千葉リハに通ううちに「もう付き添いはいらないだろう」と考えるようになりました。電車代も倍になりますしね。
ある日、妻に言いました「明日は一人で千葉リハまで行きます」と。OKをもらい、早速千葉リハまでの乗り換え計画を立てました。目標は鎌取駅。駅にやってくる送迎バスに乗る経路を組むことです。
自宅から1時間半で移動できる経路の設定なんて造作もない事です。超余裕で千葉リハに行けると考えていました。
……しかし…ダメでした…。遂行機能障害炸裂です。

当日の朝、千葉リハに予定通りに出発!?

家を出発する予定時間は8:00です。すぐに忘れてしまうため付箋を貼って何度も確認していました。8:00に出発は理解していました。
でも家を出る時間に遅れが生じました。8:00を過ぎてものんびりと支度をしていたからです。
不思議ですよね。自分でも不思議なんです。
8:00に家を出なくてはならないと確認。同時に現在の時刻も確認。「あと数分で出発しなければならない」と理解しています。
すぐに準備を始めます。でもやたらとノロノロしていたり、PCの電源を入れるなど、他のことをやり始めるのです。…そんなことをする時間の余裕なんて全くないのに!!!
これが遂行機能障害なのだと思います。やるべきことを本気で三歩移動する間に忘れてしまうのです。結果、実行できない。
前日に建てた計画は、最初の一歩で出ばなをくじかれるのでした。

なぜ時間が予定通りじゃない!?わいてくる怒り!

遂行機能障害で千葉リハに行けない怒り
自宅を出て10分もしないうちに駅に到着しました。
昨夜、綿密に計画を立てた電車の出発時刻と現在の時間を確認します。頭の中ではまだ数分の余裕があります。でも現実は…
「あれ?なんで電車の予定時間を過ぎているんだろう?」
すでに20分は過ぎていたと思います。でも遅れている理由がわかりませんでした。この時点で「なぜなんだ!あんなにしっかり計画を立てたのに!」と怒りがわいてくるのです。
妻に電話を掛けて確認です。
「なぜ予定通りの時間に駅に到着できないのか?」
そう質問をするとこう帰ってきます。
「のんびりトイレに入っていたからだよ。」
…出発の時間をあれほど確認していたのに、のんびりトイレ…自分自身にため息でした。

わかっていてもなぜか起こる遂行機能障害

同じようなことが別の日にもありました。京成千葉駅からJR千葉駅への移動の時です。
この時は計画通りの京成線に乗ることができました。でも…JR千葉駅での乗り換えに失敗しました。
「鎌取行きの外房線は6番線」
これだけは覚えています。だから6番線に行くのですが、次の電車が30分後なのです。これではリハビリの時間に間に合いません。
最初はホームを間違えたのだと思いました。全ホームを再確認します。でもやっぱり千葉から鎌取に行くには6番線しかありません。
「なんで次の電車が10:10なんだろう?9:30ぐらいの電車があったはずなのに…」
訳が分からなくなり妻に電話をしました。
わかったことは、
「京成千葉からJR千葉までの乗り換え時間は6分を想定していた」
「しかし、のんびりと歩いてしまい、電車に乗り遅れた」
こんな事実でした。
…前日の経路設定の時に、余裕をもって乗り換えができるようにしていたはずです。
でも設定した乗り換え猶予はぎりぎりの6分なのでした。それなのに、途中でトイレに寄ったりしてのんびりと歩いていたのでした。

私が理解した遂行機能障害とは

このように「頭の中で考えていること」と「実際にやっていること」が異なる。これが遂行機能障害なんだ!そう理解しました。
原因は「大切なポイントを忘れてしまうから」です。
幸いにも行動の目的は覚えていました。だから最終的には千葉リハに到着できました。遂行機能障害が酷いと「なぜ千葉駅にいるのだろう?」になってしまうと思います。
遂行機能って高次脳の中でも上位に位置する機能です。下位で支えている記憶力がダメだと、目的を忘れてしまうのです。
また注意力がダメだと、時間的に無理な経路設定をしても気が付きません。また「急がなくちゃ!」という気持ちもおきないため、のんびりと移動してしまうのです。

電車に乗ることすらできない障碍者の自分を理解

「自分ではできる!」
と思っていても、いざやってみると遂行機能がダメで出来ない。だから障害なんですよね。今回の件は良い勉強になりました。
こういうことがあると自信を失って殻に閉じこもってしまう人もいると思います。私は「移動時間の設定ミスを確認しなければ次は大丈夫だ!」とプラスの方に考えることができました。きっと健康な時に「ミスは改善の源」という考え方をしていたからかもしれません。
幸いにも私は失敗すると覚えられるので、同じミスを繰り返さなくなるようです。だからこの後は一人で千葉リハに移動できています。(ときどき失敗もありましたけど…あまり気にしないことにしています。)