悲しい高次脳機能障害|頑張るほどに周りと自分を傷つける現実

悲しい高次脳機能障害|頑張るほどに周りと自分を傷つける現実

高次脳機能障害になって5年と2か月目です。
念願の運転再開もできました。仕事もうまくまわるようになりました。
毎日忙しいです。大変な時は一週間丸々と休みが取れない時期もありました。でも易疲労は大丈夫。疲れなくなりました。
時々記憶が混乱する場合がありますが、そんな時はメモを確認です。ONENOTEやIPADをたよりに何とかやれています。
少しずつ、少しずつ、以前の自分を取り戻しています。もう以前とは遜色のないレベルに到達できたのかもしれません。
そんなある日「県外のお客さんの相手をして欲しい」という、お仕事の話が出てきました。
「大変そうだけれど、次のステップだ!頑張るぞ!」
そう考えて、前向きに引き受けました。新しい仕事です。楽しみです。また一つ以前の自分に辿りつけます。嬉しい!
とはいっても、長時間運転をして仕事をしてこなければなりません。不慣れな道を走ります。疲れもいつもよりひどくなることでしょう。また、道路も知らずにいきなり本番では心配です。迷子になったらたいへんですし。
そんなわけで、つい先日下見に行ってきました。片道4時間弱をかけて。
こちらがその時の様子を記録した記事です。
↓↓↓
運転は完全復帰|高次脳機能障害の壁をまた乗り越えた
かなり疲れました。でも明日へと繋がる一歩です。生活は苦しいのですがガソリン代も高速代も自腹で頑張りましたよ!

無駄な努力でした。もう終わっていたのです。

「これなら新しい仕事も大丈夫だ!」
運転は健康な時と同じなので特に問題はありませんでした。不慣れな道なので疲れはしますが大丈夫です。
一番の懸念事項がクリアできたので「それでは具体的にいつお仕事に行きましょうか!」と予定を立てることにしました。
そこで依頼主に確認です。でも次の瞬間私は落胆しました。
なぜかというと、私が遠くへ仕事に行く話はなくなっていたからです。
「そんなひどい!」って思いますか?
そうですよね。ところが…
どうやら私は3回くらい同じことを言われているそうなんです。
「もうその話はなくなったんだよ」
って…。
ええええええ!?
そうなんです。
これが記憶障害の悲しさなんです。
「その話はだいぶ前になくなったんだよ…」
その瞬間に思い出すのです。
「そうだった。無くなったんだ」と…
勝手に期待して現実を知って落胆する。何度も何度も何度も何度も経験してきた悲しさです。この悲しさを今まで何度味わってきたことでしょうか。
そのたびに自分にがっかりします。そして馬鹿な行動をして周りを振り回して迷惑をかけている自分が嫌になります。
妻にも言われます「何度も何度も同じことを言う」と。人からは「酷いこだわり」「融通が利かない」と言われます。
違うのです。忘れてしまっているのです。思い出せないのです。あああ…。
忘れてしまうために同じ事を繰り返します。何度も同じ事で周りを振り回します。そして自分自身を傷つけています。この5年間のうちに何度経験したか分かりません。
ついに私をずっと支えてきた、仕事仲間も私を見限りました。
すでに終わっていたのです。全てを失った現実を忘れて一人で空回りしていただけです。

  • 私は脳に障害があります。
  • 私は脳に障害があります。
  • 私は脳に障害があります。
  • だから昔の仲間とは仕事ができなくなります
  • 私は足手まといです。
  • 私が頑張るほどに周りに迷惑をかけます。

私が病気をした日に帰る場所を失いました。居場所を失いました。
居場所だと思っていたのは錯覚でした。
私は次の居場所を探さなければなりません。
ここでしっかりと記憶にとどまるようにしないと、また同じ過ちを繰り返してしまいます。
私に長年付き合ってくれていた相手も、うんざりでしょう。
悲しいです。惨めです。
それが記憶障害の現実なのです。
頑張れば頑張るほど、周りも、自分も傷ついていきます。
私はいてはならない。迷惑をかける存在です。
自覚しなければなりません。
元の世界に戻ってはならないのです。
元の世界は障害を負った私の手の届かない場所に行ってしまいました。
もう戻れません。
新しい居場所。
探します。