高次脳機能障害者の就業支援と洞察:困難からの成長と達成

高次脳機能障害者の就業支援と洞察:困難からの成長と達成

今回は、高次脳機能障害の当事者の就業体験についてです。日々職場で直面している課題や克服の道筋について共有したいと思います。
職場適応や人間関係、達成と困難のバランスなど、当事者が直面する様々な側面に焦点を当てます。
当事者の視点から見える支援者との連携の重要性も考えてみます。信頼と連携が、効果的なサポートを実現するカギだと思います。
当事者の声を通じて、支援者の方々にも新たな洞察や理解が得られるかもしれません。
私の経験がヒントになれば嬉しいです。少しでも悩める人が減るのを願っています。

高次脳機能障害の当事者が就業を始める際に、最も大切なステップや準備は何か?

最も大切なことは信用できる支援者を見つけることです。
少しでも疑念の目を持つと一瞬のうちに関係は崩れます。崩れた関係は修復できないと感じています。
特に高次脳機能障害があると

  • 悪い記憶が想起されやすい。
  • 仮に一時的に関係性を修復できても、修復した事実を忘れて元に戻る。
  • 当事者の知能は普通の大人と同様ですが、感情がズレやすいです。良い方向に傾くのは難しいです。
  • 一つの考え方に固執しがちです。そこを解きほぐす知見が必要です。

つまり。高次脳機能障害者の支援はかなり厄介で面倒。我ながらそう思います。
私自信もその状況下にあります。少しでも相手に疑念を持ってしまうと「この人は信用できない」という固定概念を持ってしまいます。この固定概念は消せません。
支援をする側にとっては、それほど厄介な障害は相手にしたくない。と感じて当然です。それだけに支援が困難。だから支援者は少ないです。しかし支援者はいたほうが良い。なにせ企業との橋渡しをしてもらうわけですから。
当事者に経験値があるのなら話は変わると思いますが、慣れない段階では企業と当事者の橋渡しができる、信用できる、支援者を見つけるのが先だと思います。

仕事の中で直面した課題や困難な状況についての例

私が経験した就業中の課題で、最も深刻的なものは「不安との闘い」です。
自分は障害があると認識している状況下で、新しい世界に飛び込むのはとても勇気が必要です。
それでなくても普段から失敗をし続けています。また診察を受ければ「あなたには障害があるから失敗をすると自覚をしなければならない」と言われ続けてきました。
心の防御力はほぼゼロに等しい状況です。自分を守る強さがすべてなくなっています。消し去るように強要されて実践してきたわけですから。
その状況での就労は不安しかありません。私自身毎日が不眠と吐き気との闘いです。
「身体障碍者と違い精神障碍者は欠勤が多い」と言われているそうです。そうなる理由はよくわかります。鎧を着ないで裸で戦場に飛び込んでいく毎日なのです。メンタルがやられて当然です。
ましてや精神障碍者は日ごろから失敗を繰り返して全身大やけど状態に等しい。その身体で敵に身をさらしているわけですから。
私は毎日通勤すること、そのものは何でもありません。しかし社内で失敗の無いように仕事をする。入社後数か月が経過しても会話の無い事務所に身を置き続ける。そのためにメンタルに異常をきたして吐き気と闘い続けている。
これが、私が直面している困難な状況です。高次脳機能障害の当事者が働くのは自分自身だけではなく、職場の人たちとの関係性が強く影響してきます。

就業中に感じた喜びや達成感について

基本的に職場の中の人たちとの距離は遠いですが、中には仲良くなれる人たちもいます。特に直接一緒に仕事をする人。…仕事を教えてくれる人。お世話してくれる人。でしょうか。
この人たちとは仲良くやれています。と同時に、いろいろ考えてくれているので仕事がスムーズにこなせています。
仕事の内容は、はっきり言って「雑用」になります。メインを張る仕事は任せてもらえません。誰にとっても必要なのだけれど、別に優先度の高い仕事があるため、どうしても後回しににされてしまう…。そのような仕事が障碍者向けの仕事として割り振られているようです。
しかし私にとっては新しい仕事です。記憶障害があるので新しい仕事を覚えるのは苦手です。「こんな簡単な作業でも間違えてしまうのか…」と悔しい思いを何度も繰り返しました。
そのような状況の中でも粘り強く工夫を繰り返して、それなりにこなせるようになると嬉しいものです。「新しい事ができるようになった」という達成感を得られる機会があるのは非常にありがたい。
出来ることが増えると仕事も増えます。負担が増えます。しかしそれは自分の脳が障害を克服して働いているという証拠です。
困難な状況にどんどん挑戦して、失敗を繰り返しながらも、少しずつでも、達成していく。これが障碍者雇用を初めてから得た特別な瞬間や経験となります。

就業を通じての自己評価の変化

検査結果通りに非常に自分は頑固なのだ。と感じました。しかしそれは仕事を確実にこなすために必要な下地。
「高次脳機能障害者は頑固だ」と言われます。遂行機能障害が現れている為融通が利かないのだと思います。
でも、それは障害を乗り越えるためには必要な評価。なのだと感じるようになりました。
周りから「あの人は頑固になった」と言われるくらいでちょうどいいと思います。その頑固さは障害を乗り越えるために必要な素養だと思います。
私はこの頑固さのおかげで、新しい職場で、新しい仕事をこなせる様になりました。
問題は山積みではあります。それでも新しい仕事ができるのです。

周囲の環境と就業体験への影響

職場環境は就労するうえで非常に大事だと思います。
例えば「うるさいのが苦手」「静かなのが苦手」このような話はよくあると思います。どこにでもあるような問題でも高次脳機能障害のある人にとっては大きな問題に発展するかも知れません。
例えば、音や室温。一度気になると、とことん気になります。気になるとメインの仕事に集中できなくなります。仕事の集中が途切れると記憶も途切れてしまいます。今まで何をしていたのかを見失ってしまいます。
記憶障害がある人にとっては「集中力が途切れる」というのは死活問題に直結です。なぜなら直前まで行っていた作業内容を忘れてしまいますから。もう一度最初からやり直さなければならないのです。
この辺りの辛さは体験してみないと判らないでしょう。記憶障害がある人達は常に、作業のやり直しのリスクと闘わなければなりません。
職場環境は仕事の進捗に大きな影響を与える要素です。
私が働く職場は、特定の時間になると雑談が増える傾向にありました。この雑談は私の集中をとぎらせました。仕事のペースがガタ落ちになる要因の一つでした。

就業を続けるために役だった支援

私には「自分が中心となって働く作業。」と言うものが存在しません。すべて「誰かが行う作業から、出来そうな一部を切り出した作業」となります。
作業時間は長くはありません。注意力が持続できる範囲内です。
しかしこれにはデメリットがあります。短時間の作業になるために、多くの種類の作業をこなす必要があるからです。作業には関連性がありません。すべてバラバラです。
基本的には「私ができそうな作業」が割り当てられました。これは非常にありがたく助かっていました。
しかし、作業はバラバラなので、別々に覚えなければなりません。また作業開始のタイミングもバラバラです。好きなタイミングでは行えないのです。
私の長い仕事生活の中で、このような「コマ切れでバラバラな仕事をこなす」という経験はありません。非常に不慣れです。
それでも何とかこなせてきたのは理由があります。それは「何度でも教えてくれる専任の担当者」がいたからです。担当者の存在は非常に心強いです。
就業を続けるにあたって最も必要な支援は、「同じ現場にいて仕事のやり方を調整してくれる、専任の担当者の存在」です。
遠慮せず、どの様な話でも出来る関係性を築ける距離感になれるかがポイントだと思います。

就業における感情の変動やストレスへの対処法

私はあまり感情の変動はありません。いつも淡々としています。しかしストレスは非常に強く感じています。
このストレスへの対策は…正直見つかっていません。まさに今身を焼かれている状態です。それでも何とかがんばれているのは、ツイッターで現状をつぶやいているからかもしれません。
つまり私のストレスの対処法は「SNSでの情報発信」となります。
身近に存在する周囲の人たちのフォローなどではないようです。どちらかと言うと周囲の人たちは、「ストレスの元」だと感じています。
悲しいですけれどこれが私の現実です。

就業を通じて得た教訓や洞察|将来のキャリアプランや目標

今回の経験で自分の得手不得手がより具体的にわかりました。
私は、絶対に目で見る情報に頼らざるをえません。またどんなに効率が悪くなるとしても確認が必須です。
それでも色々な種類の仕事を行うと漏れが発生する事もわかりました。
作業速度はあまり速くは無いようです。もともと「じっくり考えながら仕事をする」そんなタイプです。流れ作業的に次々とこなすのは苦手です。
このような条件から、私に適性のある仕事は、職人的にコツコツと作業できるタイプの物なのだと思います。
人と交流をしながら進めるタイプの仕事は無理があります。話し合った内容が脳内で混線するでしょう。その結果訳の分からない事を言ってしまう状態になると思います。
次に新しい仕事を選ぶのであれば「コツコツ」積み重ねられる仕事です。それも机上で完結するタイプです。

高次脳機能障害の当事者をサポートするために医療関係者やソーシャルワーカーに対して望むこと

ちょくちょく話を聞いてあげてください。
当事者から連絡が無いのであれば、定期的にでもメールを一本入れてください。話すのが得意なタイプであれば電話でもよいでしょう。とにかく当事者の得意なコミニュケーション方法で。
「困り事はありませんか?」
たった一言でもいいと思います。
私は常に困り事だらけです。いつも悩んでいます。困っています。毎日何もかも終わりにしたくなる気持になります。常にギリギリの状況です。でも相談する術がありません。
千葉リハとは繋がっていますが、そんなにチョクチョク連絡を取れません。相手だって忙しいだろうし、私が出す悩みは面倒なものばかりだし。だから不満をため込みがちです。ため込んだ挙句に精神的な症状が出ています。
ストレスに耐える毎日なのにストレスを解消する場がないのです。
きついですよ!本当に!
また、絶対に金の匂いをさせないでください。
「障害者を定着させると、国からお金が入る」このような仕組みがあるそうですが、これを匂わせたら終わりです。何を語っても「あなたの成績のために私を売るのか」と取るようになるかもしれません。
毎日、毎日、しんどい思いをして生きています。昔は良かった。と毎日思っています。