高次脳機能障碍者の就労|「来てくれてよかった」と言われるために…こうしてみよう

高次脳機能障碍者の就労|「来てくれてよかった」と言われるために…こうしてみよう

高次脳機能障害がある。それでも健常者と共に働く。インフルエンザ脳症を発症してか2年半。何とかここまでやってこれました。
一時期は「何もかもやめてしまいたい。」そう考えていました。何もかもというのは仕事も生活も生きることも…本当に何もかもを止めてしまうレベルです。
人によっては「その程度で!」って思うかもしれませんが、今まで順風満帆で問題なく普通の生活を何事もなく送れてきたわけですから、ちょっとした小石につまずくだけでも大ダメージを受けるような状態だったのだと思います。相当打たれ弱い状態だったと思います。
そんな打たれ弱い人間が「今日から障害者」という修羅場を経験してはねぇ…。絶望しかないですよ。
案の定うつ状態になりました。幻覚を見て過ごしていました。もしかして高次脳機能障害が原因の記憶想起のエラーだったのかもしれませんが。いずれにしろリアルな幻覚を見てヤサグレる毎日でした。
高次脳になった私は本当に「打たれ弱い」。
心が刺激に弱くなるんですよね。刺激とは不安とか恐怖とかそういう類の感情ですね。このような感情に耐えられないんですわ。弱い弱い。本当に弱い。
脳の病気は心に大きな影響を与えると思いました。つまり「脳の病気=心の病気」と言えなくもないなぁって実感しています。
そんな打たれ弱い状態では「新しい事にチャレンジ」って出来なんですよね。それどころか「今まで当たり前にしてきたことすら恐怖の対象」ですからね。朝仕事用PCの前に座るだけでも「げーげー」吐き気をもよおしていたのが何よりの証拠ですね。今までしてきた仕事を続けるのが怖くて仕方がなかったのです。
だいたい、記憶障害なのにシステム開発の仕事をするなんてね。ありえないですよ。でもまぁ何とか出来るように復活しましたが奇跡に近いのではないでしょうか。一歩間違えば廃人になっていたかもしれないです。プレッシャーと脳への負荷が大きすぎて。
こうして不安と闘い続けながら、次々と現れる壁をなんとか乗り越えることが出来ました。

高次脳機能障害の壁を乗り越えるとどうなるのか?

この「障害への不安を乗り越える」ってとても大事なことだと思います。
不安に対する耐性が少しずつできてくるんですよね。それって結局「再び自分を信用できるようになった」結果なのだと思います。
きっとこのブログにも書いていると思います。私は自分で自分を全く信用できなくなった時期があります。だってやることなすこと失敗していたんですから。
失敗の原因は行動をするから。ですよね。何もしなければ何も失敗しませんし。
で、この行動というものは、今までの経験から展開を予想しつつ目的を達成するために行いますよね。
例えば

  • お茶を入れるという目標がある。
  • だからお湯を沸かす。
  • 急須を取り出す。
  • 適量のおちゃっぱを急須に入れる。
  • お湯が湧いたら火を止める。
  • お湯を急須に注ぐ。
  • 急須から湯飲みにお茶を注ぐ。

このような手順って意識しませんが、今までの経験の積み重ねから出した答えを想起して実践してるわけですよね。大人なら誰も出当たり前に出来ます。
でも記憶障害になるとこのようなことが出来なくなるんですよね。またお茶を入れることを例にとると…

  • お茶を入れるという目標がある
  • お湯を沸かす
  • 急須を取り出す
  • 「何をしていたんだっけ?」と目的を忘れる
  • お湯を沸かしているのを忘れる。
  • 台所を離れる。
  • 数秒前まで台所にいたことを忘れる。
  • 突然別の事を思い出して別の事を始める。
  • ちなみに思い出した気になっている記憶は作話。

後者の行動って滅茶苦茶ですよね。危なっかしいですよね。恐ろしすぎて火を使わせられませんね!っていうか一人にしちゃダメなレベルです。常にだれかが付き添っていないと家がなくなります。
私はこのレベルでした。こんな感じの記憶障害。そして遂行機能障害だったんですよね。だから台所仕事は絶対にNGでした。
私は周囲から指示を受けると言われるとメモを取って執拗なまでに再確認する癖があります。だからこのような約束を守ることはできました。無断で台所を使いませんでした。不幸中の幸いです。
他の人なら「今までやっていたのだから!」って怒るかもしれません。そそもそも感情失禁が起こりやすい状態ですしね。怒らずに素直に言うことを聞けたのは「自覚があった」からなんです。
千葉リハの診察では「自覚が無い」「慢心している」とさんざん言われましたが、周囲からNGを出されたものについては納得がいかなくても厳守しました。もともとそのような性格だったのもありますが、「自分視点と第三者視点は違うのだから、この場合は第三者視点のが的を射ている
のだろう。」と自分に言い聞かせていました。
はたから見れば「素直に言うことを聞く高次脳機能障害者」だったと思います(たぶん)でもこれって逆を言うと「自分が無い」状態なのかもしれません。
言うことをハイハイと何でも聞く。反論しない。反論をしないというのは「自分の意見が無い状態」です。健常者なら裏表てきな駆け引きもありえるかもしれません。が、この頃の私は裏表なんてないですからね。つねに全力疾走状態ですし。ちょっとした刺激で感情の針が振り切れてしまう状態でしたし。
受傷間もなくの頃は健常者時代の思考だったので、制限されようものなら「見下すな!俺の方ができるんだぞ!」って烈火のごとく怒っていました。でも繰り返し繰り返し失敗を経験すると「自分は障碍者だ」と自覚するんですよね。
自覚というよりも「自虐」に近いかもしれません。自分は記憶障害のダメな奴なんだ。こんな状態になっていましたね。
障害を受け入れる。障害受容ですかね。これって「ダメになった自分を認める」ってことなんだと思います。
さて、このダメになった自分。が新しい事に挑戦するのってどうなんでしょうね。とても敷居が高いですよね。では新しい職場で働くとなったらどうでしょう?
恐怖でしかないと思います。自分のダメな部分を認識できているため「不安」があり得ないレベルでついて回るのではないでしょうか?
今の私がこの状態なんです。
ただ、今までもずっと不安との闘いだったんですよね。だからある程度は不安への体制もあるわけです。このバランスですよね。中途障碍者が新しい職場で働けるかの分岐点って。

高次脳機能障害者が働くということ。結局は…?

記事を読み返すと二転三転している感じでよくわかりにくいですね。上に書いたことをさっくりとまとめるとこうなるのかな。

  • 高次脳になる。
  • 最初は何でもできると信じている。
  • ところがことごとく失敗する。
  • 何もかもが不安になる。
  • 行動できなくなる。

結論は「高次脳になると行動できなくなる」ですかね。…ではあまりにも悲しすぎますね。でも多くの人がなっている状況かも知れません。千葉リハのセンター長(?)も同じようなことを言った気がします。「外に出ずに部屋に閉じこもりになる」って。
高次脳になると次々と壁が現れますが、「行動できなくなる」を「行動できるようにする」も新しい壁なのだと思います。
今後の私は「新しい職場に対する恐怖心を振り払いながら前進し続ける」を目標に行動していくべきなのだと考えています。
心の裏には恐怖心が常について回ります。「もしかすると記憶違いをしているのでは?」「覚えられないどうしよう」「馬鹿だと思われているんじゃないか?」「情けない人間と思われているんじゃ」こういう気持との戦いですね。

障害者の私が職場ですべきことは何か?

新しい職場ではマイナスの印象からのスタートです。
普通の人なら笑って許される失敗でも、私の場合は許されません。許されないというのは怒られる注意されるといったたぐいのものだけではないです。
「心配されてしまう。」こういうのも含まれます。
だから障碍者の私がまずすべきことは「確実に遂行できる」ことのアピールです。

  • そのためにはミスをしない。
  • わからないことはわかるまで確認する。
  • 人に頼る

これしかないと思います。当たり前のことかもしれませんが「人に頼る」というのは最高級の高次脳スキルです。高次脳の人はこれができません。出来ないから困ってばかりで固まってしまうのです。普通の人なら最悪ごまかせもするでしょう。でも高次脳人はそれすらも出来ないのです。だから完全に動きが止まる。
止まった後に訪れるのは感情失禁ではないでしょうか。泣いたり怒ったりです。
昔お客さんのなかに仕事中に「うあーーー!」と突然怒鳴る人がいました。全くもって意味が分かりませんでしたが今はよくわかります。どうしようもなくて自分を責めてつづけて爆発してしまったのだと思います。
まとめると「私が新しい職場ですべきこと」は「仕事を確実に遂行すること」です。そのためにはわからない部分は人に聞く。そして【得た知識は再利用可能にしておく。】ですね。いわゆるマニュアル作りですね。考えなくても仕事が可能になる環境作りですね。
これって障害者だけの問題じゃないと思います。健常者間でも仕事の勘違いや聞いたり押したりすることへの時間ロス発生の防止にもつながります。ミスも減りますし。効率が良くなりますね。

理想のゴールを最初から作り上げてはならない

さて私が新しい職場ですべきことが明確になりました。後は現場で実践するだけ…とはなりません。
なぜかというと冒頭でも述べた通り私はペーペーの新人君です。しかも障碍者という立場なんですよね。ぎゃくにお偉い部長さんといった肩書を引っ提げて入るのなら別でしょうけれどね。ほんと、信用がゼロというかマイナスの状態なんですよね。
そんな人が「これこれこう改善しましょう」なんて言っても信用されません。聞いてもらえません。「頭のおかしいやつが寝言を言っている」状態です。
例え正解をしっているとしても聞く耳を持ってもらえないのです。これってこの2年半の間ずっと実感してきたことです。どんなに正論を吐いても障害があるというだけで聞いてもらえないのです。
だから新しい職場ですべきことは「信用を稼ぐこと」です。とにかく日常業務を確実にこなす。そのためにはわからないことは確認する。マニュアルにする。このような細かい事、面倒なことを率先してこなしていこうと考えています。すでに実践しています。
「私が来てもらってよかった。職場が変わった。」
職場の人たちにそう言わせたい。
これが今の私の目標です。
「最初の一歩は細かい事から。誰もやらなかったことをコツコツ埋めていく。そして信用を稼ぐ。」
障碍者の就労なんてレベルでは終わらせませんよ!