ツイッターで記憶障害の知り合いのために、メモを沢山取ってもらおうとしているつぶやきを見かけました。
「知り合いが記憶障害だからメモを沢山取るように勧めたい。その対処法であっている?」(要約)
知り合いの方の力になりたいのですね。とてもやさしい方なんですね。
でも、ちょっと待ってください。それって当人にとっては、負担が大きいかもしれません。収拾がつかなくなる恐れもあります。
なぜでしょうか?私自身が記憶障害でメモ魔。いろいろ苦労したので想像してしまうのです。
もちろん無理なく活用できるのなら問題なし。っていうかメモは必須です。
でも記憶障害がある場合は注意しないとドツボにはまってしまう恐れがあります。
この記事では記憶障害になった私が陥ったメモ地獄についてお伝えいたします。この記事とあなたの現状を照らし合わせてみてくださいね。
私の仕事はシステムエンジニアです。工場の基幹システムを作り、導入、サポートまで幅広く対応しています。
そんな私が2019年1月にインフルエンザが原因で高次脳機能障害(記憶障害・注意障害・遂行機能障害)になりました。
仕事中に一言声をかけられただけで、数時間かけて積み重ねた記憶が全部吹っ飛ぶような状況です。記憶が飛んだときの怒りは尋常ではありませんでした。
それでも今の仕事を続けていきたい…。毎日石にかじりつくようにして、泣きながら仕事に喰らいついていました。「あいつはダメになった」なんて言われたくありません。
レッテルを張られる恐怖心から逃れるためにメモを狂ったように取りまくっていました。
しかしその結果が「むやみにメモを取るのはダメだ」という結論だったのです。なぜなのでしょうか?
なぜ「むやみにメモを取るのはダメだ」という結論になったのでしょうか?
私は救急車で運ばれた当日。一緒に救急車に乗ってきた子供に
「今日は学校に行かなくていいの?」
と数分おきに繰り返し確認して泣かせてしまうような意識障害真っ只中。その頃から憑りつかれたのようにメモを取りまくっていました。
検温、血圧測定、検査予定、検査内容、食事、トイレの回数。とにかくメモです。看護師さんの名前と似顔絵も書いていました。
(入院中のテレビ台のメモ)
退院後もとにかくメモ・メモ・メモ。
パソコンの画面周りは付箋だらけ。メモ用の大学ノートはあふれかえり、もう何が何だかわからない状態です。
そこまでやってきてようやく気づきました。
「メモを沢山取っても管理ができない。ほとんど使えていない…。」
メモを取るのは完全に習慣になっています。しかしその後の整理整頓ができず、メモを活用できるような状態ではなかったのです。
「メモ帳を読み返せばいいだけでしょ?」
普通の人はそう思うかもしれませんが…それができないのです。だってメモ帳が次々に増殖しちゃっているし記憶障害だから。どこに何があるのか把握できないのです。
「メモを取りたい」と思ったときにいつものメモ帳がない…。
だからといって探すのに時間をかけると「あれ?何を書こうとしていたんだっけ?」になってしまいます。
だからすぐそばにあるメモ帳に、すぐにメモをしなければなりません。自然と中途半端に使っているメモ帳が増えていくのです。
イオンへ牛乳を一本。お使いに行くだけでもメモが必要です。B5サイズの大学ノートは持ち歩きに不便です。手のひらサイズのノートを持ち歩きます。またメモ帳が増えます。
こうしてどのメモ帳に何を書いたのか、訳が分からなくなるのでした。
メモを取るだけなら簡単です。でもメモを振り返り、内容を活用するとなると途端に難易度が上がります。慣れないうちは当人の力だけでは無理です。絶対に管理する人が必要だと思います。
いずれにしろ記憶障害者を相手に「メモを沢山取りさえすればよい」の考えはまずいです。もちろんメモは必須ですが、大切なのは情報の選択とその後です。
それでは具体的に、記憶障害にどう対応していけばいいのでしょうか?
私は市のリハビリセンターでグループリハビリを受けました。そこで発表された当事者の方々が実践しているアイデアを知っています。それを別の記事で紹介したいと思います。この方法が万人にマッチする保証はないですけど、一つのアイデアとして受け取ってください。
また、私の個人的な記憶障害対策も別記事で紹介したいと思います。私はPC歴が長いので、いかにもシステムエンジニアぽいちょっとマニアックな対策となります。
おかげで、半年以上ディスプレイ周辺が付箋地獄でしたが少しずつスッキリしてきています。うれしいです。